さて、神将になったは良いが最初は何をすればいいのだ?
ひとまず、新たに宿舎を与えられたので部屋の整理でもするか。そう思い、式場を出た所で話し掛けられた。
「はじめまして、ガネーシャさん。貴方は元老院の叢議員の息子さんですよね?」
話しかけて来たのは、人型の兎人の女性。私と同じく神将の、ツクヨミ将軍であった。
「そうです。よろしく、ツクヨミ殿」
右手を差し出すと、握手に応じてきた。敵意は感じないな。
握手のあと、少し思案する仕草を見せてから話を始めた。
「貴方は、被支配種族が七神将の半数以上を占める事をどうお考えですか?」
ああ、そうか。私の父は階級社会保持派として有名だからな。
「多くの人に誤解をされていますが、父は決して被支配種族を見下してはいません。国家運営上の役割分担が必要との立場ですし、例外もあると言っています。私も貴女のように例外的な強者を軽んじるつもりはありません」
話してわかる相手ならいいのだが。私は父の立場と、自分の思いを包み隠さず話した。
「なるほど……貴方はそう考えるのですね」
何かを納得した様子で頷き、笑顔を見せるツクヨミ。
「これから、よろしくお願いします」
そう言って、手を振りその場を去った。
どうやら話の通じる相手のようだ。新しい同僚と険悪になるのは好ましい事ではないし、正直に話して良かったな。私は少し気を良くして、部屋に向かった。
「なんだこの部屋は!?」
そして与えられた部屋に入り、驚愕した。一目で高級とわかるカーペット、私の巨体でも二人は優に収まる巨大なベッド。
「そうか、神将は大将と同格。これぐらいの部屋でなくては示しがつかないのか」
ようやく自分の部屋だということを受け入れたが、落ち着かない。外に出て当てもなくぶらつくと、また話しかけてくる者がいた。
「にゃにゃっ!? 象さんだ!」
バステト将軍。七神将の副長でもある、人型の猫人の少女だ。
「でっかーい! この鼻動くの? 動くの?」
「……」
鼻を動かして見せる。
「おおー!」
目を輝かせて鼻の動きを追う少女。完全に猫の反応だ。このままだと鼻を攻撃されるかもしれないので、早々に動かすのを止めた。
「はじめまして、バステト殿。お散歩ですか?」
首を傾げ、少し考えてから口を開く。
「お散歩? ううん、探検してたの!」
なるほど。
どうやら実力はともかく精神的にはかなり幼いようだ。だが、なにか違和感がある。この無邪気な態度が、彼女の本当の姿なのだろうか?
「セベクが構造を覚えて来いって言ってたから!」
セベク?
神将の一人だが、構造を覚えるとは?
言い知れぬ不安を感じた。
「セベク殿とは仲が良いのですか?」
私はまだ同僚達の人間関係も知らない。少しずつ情報を集めた方が良いだろう。
「うん!」
満面の笑顔で頷くバステト。その笑顔から裏に何か隠された意図があるのか探ることは出来なかった。