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ー鼓動ー31

「スマン……それだけは何回考えてもいい答えは出んかったわぁ」


 そう雄介は頭まで下げてまで和也に向かい謝ってしまっている。


「……だろ? だからさ、仕方ないじゃん!」

「ま、俺等の方も東京に行くのは今回だけにしとくし」

「え? いいよ、お前達には交代してくれる朔望達がいるんだし、また、朔望達に頼んだらいいんじゃねぇの? それに、わりと俺等の方はお前達はのんびりとさせてもらってるからな、なぁ、裕実」


 そう言うと、和也は隣に座っている裕実の肩へと腕を掛けて話を振ったようだ。


「え? あ……」


 一瞬、裕実は和也の方に視線を向けて見つめたのだが、何やら和也から感じ取ったのか、


「あ、ええ、そうですよねぇ」


 そう笑顔で俺達に向かってそう答えてくれる。


 裕実の性格っていうのは、こう直ぐに振られても空気を読める所なのかもしれない。だからなのか、今の和也の言葉にもちゃんと反応する事が出来たのであろう。


「それって、ホンマにか!?」


 そう雄介にしては珍しく、その二人の反応を疑っているようだ。


「あ、いや……だ、大丈夫ですってばっ!」


 そう慌てたように返す裕実。そこが逆に怪しくて仕方がないのだけど。


「そうそう! あんまり俺等を追求してくんなよなぁ。裕実、そういう事考えちゃって恥ずかしがるんだからよ」

「え? あ、そ、そやったなぁ」


 そう今度、雄介の方がその和也の言葉に慌てたように答えるのだ。


 きっと和也にそういう事を言うなって静止させられてしまったという事だろう。


 雄介だって裕実の性格っていうのはもう分かっている筈だ。だから和也にそう言われてストップしなきゃいけないと思ったに違いない。和也だって雄介にそう言えば雄介の事だからストップしてくれると思ったのであろう。


 ……ま、そういうもんだよな。


 それでお互いギクシャクしないんだから、それはそれでいい関係なんだと思う。


「ま、とりあえず、今回は二人でのんびりしてきたらいいんじゃねぇの? って事だな」

「ああ、そうやんな。ホンマ、和也ありがとうな」

「いいって、本当に俺等の事は気にしなくていいからさ。本当に俺等なんかはお前等より緊張感無いと思ってるからな。なぁ、裕実!」

「そ、そうですよっ! ですので、今回は本当にお二人でのんびりとして来て下さいね。朔望さん達が島で診療して下さるのですから、何も考えないでゆっくりとして来て下さいね」


 そう裕実に言われると何だか安心出来るような感じがしてくるのは気のせいであろうか。 ま、そこが裕実のいい所なんだけどな。

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