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ー鼓動ー34

 そんな事を考えているうちに俺は眠りの住人となってしまっていたようだ。


 次の日、起きた時にはもう隣には雄介に姿はなかった。


 相変わらず早いっていうのか、昨日は和也達が朝早く起きて朝ご飯を作ってくれたからなのであろうか、今日は何とも言わず朝食を作るのが雄介だったからなのかもしれない。


「ま、そこは仕方ねぇか……。そういうルールなんだもんな。しかし、雄介ってタフだよなーってか世話好きっていうの?」


 そう俺は誰もいない部屋で独り言を漏らす。


 雄介はついこの間、海の中を彷徨っていた筈なのに今ではいつものように起きて朝食を作っている。そこに本当に感心する俺。


 そして俺はベッドから降りると、下へと向かうのだった。


 俺がリビングへと通じるドアを開けると雄介は俺の存在に気付いたのか、


「おはよう!」


 そう相変わらずの笑顔で挨拶をしてくる。


「ああ……」


 そう俺の方も相変わらずな返事をするのだ。


 そしてソファに座ると、新聞を開く。


 ……って、新聞? あ、雄介が起きてから取りに行ってくれてたんだな。


 そんな小さな事に初めて気付いた瞬間だったのかもしれない。


 いつも俺が起きると新聞を読んでるのを覚えておいてくれたのであろう。だからなのか新聞はいつもソファの方にあるテーブルの上に置いたあった。


 そんな雄介のさりげない仕草っていう所も好きだったりする。


「あ、そういやさ」

「ん? 何?」


 そう言いながら俺が雄介に向かって話し掛けると、俺の方へと顔を向けて来てくれる雄介。


「俺等、今日、東京に行くだろ? それならさ、用意とかしなくていいのか?」

「だって、定期便っていうのは昼に来んねんやろ? それなら、後で用意しても遅くはないんと違う?」

「あ、そっか、それもそうだよな」


 そう俺は雄介の一言で納得してしまう。


 確かに雄介の言う通り、定期便は昼位に来る予定だ。


「え? あ、ちょっと待てよ」


 俺は急に思い出した事があった。


「……って、事はさぁ、今日の定期便で俺の親父とお前の親父と和也のお袋と一緒になるって事なのか?」

「え? はぁあいい!?」

「だって、そういう事になんだろ? この前の定期便で俺の親父達は来てるんだからさ、親父達だって東京に帰るって事になるんだからさ」

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