「そういうもんなのか!?」
「そういうもんなんやって」
「ふーん」
「……って自分で振っておいて、なんや興味無さそうな返事やんなぁ」
「あ、いや、そういうんじゃなくて、ただ感心した方だったんだけどな」
「あ、スマン……勘違いしてしまって。言葉ってホンマに難しいもんなんやなぁ。ホンマ今のは俺の勘違いやって」
「ま、仕方ねぇよ。勘違いっていうのは誰にでもある事だからさ」
「あ、まぁ、確かに、そうやんなぁ。そういや、とりあえず、担当は知ってる新城先生でええのかもしれへんけど、望も一緒に診察室に入るんか?」
「当たり前じゃねぇか。だって、何の為に今日、俺は雄介に付いて来たと思ってんだよ。俺も検査の結果とか知りたくて来たんだからな」
「ああ、そういう事やったな」
「それに、新城先生なら、逆に知ってる先生だから、俺も診察室に入りやすいだろ?」
「あ、そういう意味でもなぁ!?」
「……ってなぁ、そんなに身を乗り出してまで聞いてくる事じゃねぇだろうが。お前が小児科医で朔望と仲がいいように俺の方は新城先生と仲が良かったりするんだからよ。要は相談相手になってもらってるんだからな、あ! でも勘違いするな……相談相手って言っても病気とかの方だからよ」
「え? そういうのって和也には聞かへんの?」
「和也はプライベートな相談だけど、新城先生には仕事での話を相談する為相手なんだよ」
「あ、そういう事な」
「雄介だって、仕事関係の事で裕実に話した事あるか?」
「あー、流石にそれはないな」
「そういう事なんだよ」
「あ、まぁ……そうやんな」
そう話をしていると、どうやら雄介の番になったようで雄介の名前が呼ばれる。
「おっ! 思ってたより早かったみたいやなっ!」
そう言って雄介は愛用の腕時計へと視線を向けるのだ。
雄介っていうのは物持ちっていうのがいいのか、大事に使ってるっていうのか、その時計というのは俺達が恋人になる前から付けていた物だ。
もう大分長く付けているからなのか、画面には傷が付いていて、もう今にも止まってしまいそうなのだが、雄介は未だにそれをしていた。
きっと今雄介がしている時計というのは、雄介が付けてからずっと雄介の事を見てきたのであろう。
そして俺達は診察室前にあるソファで呼ばれるのを待っていた。