目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

ー鼓動ー79

「あー、それはやなぁ、話すると長くなってまうんやけどな」

「では、私はどうすれば宜しいのでしょう?」


 そう言って新城は雄介の方へと体を向き直す。


「早く言えば、MRIとCTの検査をさせて貰えたらええだけの話やねんけど?」

「そうですか。ですが、残念な話なんですが、今日はどちらも予約でいっぱいでしてね、空いてるのは……」


 そう言うと新城は再び電子カルテの方へと体を向き直し、


「……んー、三日後なら空いてますけど」

「ぇえ!? そうなのか!? そういうもんなのか!?」


 と、ただただ聞いていた俺の方が驚いてしまっていた。


「そういうもんなんですよ。予約とかで来てる人達だってMRIやCTは緊急じゃない限りは予約して頂かないと使用する事は出来ないんです」

「えぇ!?」


 と俺の方は完全に忘れていたというのか今まで予約無しで来た患者さんの事は診た事はあったのだが、いきなりCTを使う事なんてなかったのか完全に忘れていた事だった。


「それに緊急性が無いのなら、三日後でも宜しいですよね?」

「あ、まぁ……」


 そう今度は雄介が答える。


「緊急性があるというのか……んー、俺的には全然問題と思うねんけど、望がな、早くしろっていうのかしてくれっていうのか?」

「そういう事なら逆に大丈夫だと思いますよ。本人が、しかも、医者である本人がそう言っていらっしゃるなら緊急性の方は無いかと思いますけどね」

「あ、でも……雄介は、二、三日前に海で漂っていて、それで、助かったばっかりっていうのか」

「それで、意識があるのなら、大丈夫だと思いますよ。ま、そこは本人次第って所ですかね?」

「ぁあ! ほんなら、三日後でええわぁ。緊急性が無さそうなら、他の患者さんの方を優先してもらった方がええやろしな」

「それでは、三日後に入れておきますね」

「ほな、そうしといて下さい」


 そう言うと雄介は椅子から立ち上がる。


「じゃあ、次は三日後でお願いしますね」

「待ってますよ……」


 と新城は言い、とりあえず今の俺達というのは病院を後にするしかなかったのだ。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?