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第3話


違うってば!

でも……

視線で マニの大腿と臀部を 撫でた

滑らかで 付け根にかけて 肉付きよく色香が漂う

 臀が きゅ……と 形良く上がっていた

 艶やかさに この蜜に 「男」はかなう筈もない

 きっと 1も2も無く求めてしまう

 きっと蜜にによる蝶のように

 令が 再びかぶりを振る

 まだ彼女が喘ぐ姿が 頭から出ていかない

 大人の「おんな」の彼女が 禁欲的なアラバギの 「意志」ですらとろかすことを 令は感じる

 きっとアラバギは マニの肌に 口付ける

 嫌だ

 令が 身を捩った

 彼女の手がアラバギの 裸の 胸をさすらって下におりて行くのを 振り払えない

 頭から出ていってくれない

 そして2人が

「ひとつ」になるのを 止められない

「あ!……あ……らばぎ!」

 変なイントネーションで 令は 弾けるように彼を呼んでいた

 離したくない

 令の 手が アラバギの 背中を目指す

 やだ……!

 すがりついて

 ……!……

 ぱしり……

 マニにはらわれた

……なんで……!

「迷惑だってのが……わからないの」

 挑むように 目線を絡ませて マニが口の端を 上げた

「あんたみたいな身勝手なお姫様」

 マニは 己の胸にアラバギの 腕を抱く

「アラバギに迷惑だって!わかんないわけ?」

 ねぇ……!

 ねめつけられて 令が怯む

 アラバギは 痛むような面持ちをしていた

 目が まるで 涙を切るように細まる

「わかんないの?」

 責めるように 令を切り刻むように マニが挑む

「わかんないの!」

「所詮!自分勝手なお姫様気取りね」

 先の尖った

 冷たい爪で 抉られた 令の心は 鈍く 重く傷んだ

「人の迷惑を考えられない 勝手な「片」思いなら!」

 どん……っ

 マニが 令を突き放す

「やめちゃってくれない!」

 身の程知らず!

 ぷい

 細い顎が そっぽを向く

 紅い髪が 舞い散る 深紅の光沢を放って

 まるで 火の粉が散っている様だった

「わかってるのかしら」

 冷たく言いつのり マニは目だけで 令を刺した

「その……へんで」

 ラキが割って入る

「やぁ……よ」

 マニが噛み付いた

「わかってんのかって聞いてるの」

 マニの細い爪が まるで悪魔の 爪のようで それは

 とどめようとする ラキの 頬に 食いこんでいた

「本当にわかった?お姫様」

 マニの言葉は 気が強く 否定すら許さない語尾口調で 令の 唇の動きすら 否定しているようだった

「いや……」

 音も無く…… 無理に何度か唇を動かして 令は 否定した

 だけれど マニの言葉の弾幕に かき消されてしまう

「アラバギと私はね 高天で生をうけて以来」

「ずぅ……っと一緒なの」

「彼は年下だからおしめを してた頃から知ってるわ」

 マニは延々と 自慢話を初めてしまった

「だから……ねぇ……アラバギが 「悦ぶ」所も いーっぱい」

「それこそ」

 足の裏から 耳の裏 頭頂の つむじのどちら巻きに至るまで……しってるのよ!

 あんたに告白されて「苦しんで」るアラバギの「思い」ですら しっているつもりよ

 アラバギの……思い の箇所で 微妙なニュアンスの変化があったのに

 令は気づけなかった

 いや……気づいてはいけなかったのよ……?

 言葉を終えて マニは ちらりと 令を眺める

 その「瞳」に ひどく「痛い」ような感情が 混じっていて

 しかし真意は マニとアラバギ ラキにしか分からなかった


「わかった」かしら……

 刺さる いばらの言葉の棘が 何故か僅かに引っ込んだ

 それは令が「泣いて」いなかった……から

 令は毅然と瞳をあげた

……諦めない……

 アラバギを好き

 もっと女になって 他の男性と交際して おとなになって

 それまで アラバギを 諦めないから!

 他の男性を 踏み台にしたって!

 絶対!綺麗になって認めさせてやるから!

 令が きつく唇を 噛んで マニを見据えると

 マニは ちょっと 哀しそうな……遠い目をした

 きっと……そこ……には 令は 踏み込んでは……ならないような 切れる切なさ

 それは 草の葉で指を切るかのような 痛みを 伴う



 ぐ…………!


 ……!……

 度重なる揺れが 足下を震わせる

 うぁぉおおぉお……

 死霊にも似た叫びが 地の底から沸きあがる

 ず……う……おおおお……お

 歪んだ

 たわんだ空間が 鏡面に反射した 虹のようにつやめいている

 邪気が……!

 邪気が このままでは……

 地上へと溢れ出してしまう……

 もし……

 もし この濃度の邪気に 人間が触れたなら……

 変質してしまう……

 明らかに「ただ」の「人間」では いられなくなる……

 満月に変質する 人狼のように……

 人は……人は

 人は「人間」を「食らう」ようになるだろう

 いや追い落とす

 人を蹴落とす

 そんなレベルでは無い

 文字通り……カニバリズム……が はじまってしまう

 人肉食……

 人間がそう

 目の前にいた恋人が……

 目の前にいた母が……

 横で寝ていた夫が……

 突然……愛するものを食らうのだ

 アラバギは 身震いした

 止めなくては

 今……今 身内で争う時期ではない……

 アラバギは 刀を 手に呑み込むと 踵をかえした

「悪いが……令……「また」に「して」くれ」

 酷いと 冷たいとしりながら……その言葉を敢えてぶつける

「上がろう」

 細身の尖った顎を上げるとアラバギの髪が さら……りと鳴った

 アラバギは 近くの梯子に足をかけると ぎちりと 白い手で梯子を握った

 梯子は 錆

所々 錆に食われて 穴が空いている

 1人ずつ上がるのがやっと

 判断して令を先に上げた

 体重が軽い……

 女の方が当然先であろう

「まって」

 令が 思い付いたように顔をアラバギに向けた

「上の……蓋は」

 先は 男が3人がかりでやっとであったのだ

 上がっても

……閉まって……いては手の打ちようがない……

 令では絶対に動かせはしない

 相手は 50キロの鋳鉄だ

「は……」

 緩く松末が笑った

 肩に意識の無い 慎を抱え 片手には 無線を持っている

「さっきまでは ただの「箱」だったがね」

 ぶっ……つ


 スイッチを 入れると


 が……がが……


 と……無線音がした

「幸いあいつが天井に 大穴開けてくれたんで」

 ふ……

 口の端を ちょっと 皮肉に 歪める

「「仲間」に連絡がついた……」

 ……開けてくれる……と……さ……


 第6部

 第1章 イト


 令が先頭を切って上がる

翁の街は邪気に包まれ

 朝焼けの空を迎えつつあった

 肌寒い!

 ひとつ身震いした

 松末が 槙を背負い しんがりだった

慎の顔があおい

「慎」

 ラキが結界をはる

「このままでは 助からない!」

 慎は消耗しきっていた

 アラバギは 慎の額にふれる

「凄い熱だ」

 食われすぎた!

 アラバギが歯噛みする

もっと早く気づいてやれてれば!

アラバギのきついぐらいの苦しみが伝わってくる

「令」

 そっと 愛しい令の名を 噛み締めて

 バギは令をよばわった

「結界の中に虹の蓮を」

 印をくむ

「うん」

 令が 祈る

「慎……慎もどって来て」

 涙があふれた

 令の指先が虹に光を帯びる

「天照大御神お力を」

 乾ききった 慎の唇が痛々しい

 慎

 祈り……そして瞑目する

 アラバギは 勾玉を取り出した

 光を放つ勾玉を 慎の 胸に置く

 ラキが 龍神水晶に祈った

「こいつ 辛かったろうな」

 松末が 拳を握りこんだ

「あんな奴 身体に飼ってたら魂まで喰らわれる」

 令の肩が うぞり と呻いた

 慎の身体を浄化している

 この時に 何かが 蠢き出そうとしている

 令の後ろにいたマニが 何かに気づいた

 邪気!

 結界の中に 邪気の発現がある

「バギ」

 アラバギも ラキも 松末ですら気づいた

 濃い邪気!

 令!

 令の肩から 何かが弾けた

 まさか!

 アラバギの体が 令の肩に触れる

 脈動する邪気は そこから 発現していた

「令!」

 令の意識が飛んだ

 皆の声を聞きながら

 闇へと落ちる

 令!

 悲鳴にも似た アラバギの声を最後に聴いた


 マニが令に触れた

 そしてアラバギの頬に平手が飛ぶ

「どうして気づいてあげなかったの!この子も食われてるじゃない!」

 アラバギの頬に マニの手形が残った

「ここまで食われて!危険な状態!あんたの目は節穴?」

 マニが令の服を脱がしにかかる

 肩の痣を見て悲鳴をあげる

 目玉!

 そこにはぎょろりと 蠢く目玉が あらわれていた

「ラキ!癒しの水呼べる?」

 マニがテキパキと 指示をする

 勾玉こっちに頂戴!

「この子の方が危険だわ!」

「朱雀に食われたの だいぶ前よ」

「令」

 マニが 膝に令の頭をのせた

 このまま食われきったら 令の体が朱雀になってしまうのに!

マニの目から涙が溢れた

「バギ抱きしめでやって あんたの思いが必要よ」

「彼女を引き戻して!」

 マニがアラバギの胸に令を預けた

 いい!

 強く願って!思いは強い程いいの!

 マニの手が令の髪を撫でた

「この子いい根性してるわ!私好きよ」

 マニが優しく令の頬を撫でる

「令!」

 アラバギのまわりで 風が唸る

 アラバギの願い!

 そして皆の願いが令を 包み込む

 令の痣の あたりから 触手が伸びて 広がろうとするが アラバギの涙が触れるたびに消えていく

 令の思いは そう 答えてやれればどんなによかったか!

「令!戻れ!」

 アラバギが 叫ぶ

 高天の空にむかって

「バギ」

 ラキが 癒しの水を差し出す

 アラバギは 口に含むと 迷わず 令に 口付ける

 令!

 マニはそんなアラバギを 優しく見守った

 令!

 アラバギの涙が令の顔に落ちた

「……バギ」

 令の口から アラバギの名が漏れた

 そうだ!令!戻れ!

 アラバギが 令を掻き抱く

「令!」

 令の肩の痣が びくっと震え 剥がれ落ちた

 マニの炎が それを祓う

「令!」

 アラバギの肩から 緊張が 解ける

「もう……大丈夫!この子強いわ!合格ね」

 マニがぱちりとウインクした!

 令!

 アラバギは 令を そうっと横たえると

 天を見上げた

 こんな試練を 何故!

 マニが その肩を抱く

「元気だしなさい!王子様起こしてやらなきゃ!」

 アラバギは 慎の体に 勾玉の 癒しを発現させる

「ライバルなのにな!苦労するな!」

 松末の 軽いジャブに アラバギが 苦笑した


 慎……!

 アラバギが 名を呼ぶ

 イト……私の声が聞こえるな 目覚めさせてやってくれ

 そして令の側に

 戻れ

 戻れ 慎

 アラバギは 慎を呼ぶ

 ……お前が 令を好きだと 言った時 あれはお前だったろう……心の底から頼む!

 令を1人にするな!

 祈って!祈って! 祈って !

 はたりと 痛い涙

 慎の 願い!

 アラバギは 泣く!

 令の側に!

 嗚呼!それが自分であれたなら

 どんなにいいか!

 だけれど 慎を呼ぶ

 戻れ!

 慎が

 慎の目が開いた

「泣いてるのか?アラバギ」

 優しい声

「イト?」

 マニが動いた

「あんた!王子様は?」

「寝てるよ……疲れたんだろう」

 暫しこのまま

 イトが身体を起こした

「良く耐えたな……アラバギ」

 アラバギの髪をイトが撫でた

「っく……」

 アラバギの目から 涙が溢れた

「すまないアラバギ」

 イトにすがって泣くアラバギに 皆の手が触れた

 アラバギ!

 イトが 優しくアラバギの頭を抱える

「お前に 辛い思いをさせたな」

 全てを悟ったイトの優しさこそ

 アラバギに必要なものだった

「朱雀を倒そう」

 イトに支えられて アラバギが 立ち上がる

「ああ」

 涙が 乾かぬアラバギだったが 毅然と上げた その瞳は 強い意志を秘めていた

「イト」

「なんだ?」

「朱雀を倒し我等が眠りについた後」

「ああ」

「慎に令を託す」

「ん……ああ」

 イトの表情が揺らいだ

「なあ」

 アラバギが 呼びかけられて イトを見る

「令を静を……託すのやめろ」

マニが頷く

「あんたがいてやんなさい……高天の姫さんにはみんなで頼んであげるから」

 にっこりとラキが笑う

「だからさ!もう泣くな!いくぞ」

 松末は 令を背負い上げる

「あんな奴 放ってはおけないだろ?」

 アラバギが 決意したように頷く

「そうだな……すまない」

「しっかし朱雀って逃げ足早いわね!追いずらい」

 マニが イラついたように呟く

 あいつなら きっと 大社だ!

 イトが呟く

「同化していたから多少は読める」

「あらァ!頼もしいわね」

「からかうな」

 イトが快活に笑う

 暖かいアラバギは 思った

 ここに4人が全て揃った

 そして姫巫女 そして頼りになる松末もいる

 アラバギの 張り詰めていた 責任感が 分けられていくのをかんじた

「バギ!おまえだけで……もう背負わなくていい」

 イトが アラバギの頭をかいぐる

 アラバギが 心から笑ったのは この時だった


 皆は 大社へと転移する

 悪意!敵意に満ちた 気配が 満ち始めている

「大社の 霊性をまず汚すだろうと踏んだが当たりだな」

 イトが 顔をしかめる

「あいつ 」

 大社の 上空を睨んだ

 いるわね!

 舌打ちせんばかりの その表情は 苦しそうだった

「息つまるわね」

「大社を堕とされたからな!我々にはきつい」

 アラバギが 刀を喚ぶ

「マニ行けるか?」

 ラキが聞く

「行かざるえないじゃない」

 マニが 強がってウインクする

「そういうとおもったよ」

 イトが笑った

「令」

 アラバギが 松末の背にいる 令の頬に触れた

「もう少し寝かせてやりたいが……起きてくれ」

 アラバギの 声音に 令が 目覚める

「バギ?」

「おはよう」

 マニが 令に笑いかけた

「もう意地悪は言わないわ!安心してね?噛まないから」

 アラバギが 笑う

「すまないな?立てるか」

「うん」

 令の足が大社の 白砂利を 踏んだ時

 うねる邪気が吹き付けた

「殺されに来たのかえ」

「蛍火!」

 アラバギが 呟く

 令が みた あの女だった

「面白くないわね?一同揃って首でも狩ってやろうかしら」

 蛍火の脇に もう一体の女鬼

 翁でみた あの女

「あれれ!やっぱり 女の子を見る目は外した事ないしね」

 ラキが ギリと 睨む

「お前!何人殺した」

 怒気が ラキの肩を震わせる

「えっとね?まだ100人てとこかしら?」

「そうか?お前の身体に倍の傷をつけてやるよ」

 ラキが怒るのを 令は 初めてみた

 その手が ギリギリと 握られ

 神気が オーラとなって立ち上がる

「いいな?」


 ラキの体を水霊が纏わった

堕とされた 大社のなかですら

 ラキの美貌の 神気はかがやいていた


 ゆらり


 翁鬼の妖艶な 微笑みが 復活した朱雀の邪気を織り込んで あたりの邪気をたばねていく

 令の背を 悪寒がかけぬけた

 汗がふきだす

 顔色が悪い

「令」

 アラバギが 呼んだ

「はい」

「結界を喚べるか?」

「うん」

「ラキ!ちょっと!ラキ!」

 マニが 悲鳴をあげた

「あんた喚ぶ気じゃないでしょね!」

 ラキの神気の奔流は 禍気のなかでも それすら食んで捩りあがる

「へ!」

 ラキの口角があがった

「4人揃ったしね!練れそうだ」

 ばずん!

 ラキの身体を 封じていた何かが はじけた

「おまえねぇ」

 松末が心底呆れ顔だ

「龍神喚ぶのかよ!」

「令ちゃんちょっと荒れるわ!」

 マニの笑顔

 邪気のうねりが ばずりと食われる

「ふん!」

 翁鬼が 跳んだ

 それは全身の禍気を しなやかな足から抜いた

 見事な跳躍

真紅の爪が伸びて

 ラキの腕とまじわる!

 がづん!

 空間が鳴いた

「ラキ」

 松末が 冷や汗をかく

「あんなの身体に封じてんのかよ」

 見れば

 暗天をぬめる青い鱗の 神気の塊

「絶好調かよ」

 大きな雨粒がまるで空間を束ねたように降ってくる

「四精霊が揃えば制約がとけるのよ!」

 マニが松末にウインクする

「ふーん」

 にや

 松末が唇を緩めた

「四精霊揃ってってやつだ」


 ばち!

 ばち!

 令の 神気の結界を 雨粒が 叩く

「へぇ」

 翁鬼の 怪しげなまでに艶めかしい 体が しなと 動いた

「面白いじゃない!」

 ぐお!

 翁鬼の身体が弾ける

 鋼の 毛皮を持つ 巨大な 鬼!

 身の丈なら2メートル

 が……

 鬼は 蚊でも潰すようにラキを踏み潰した

「たわいも無い」

 女鬼が にやり笑う!

 ズドン!

 しかし!

 天から!地から太い神気の柱が 爆流のように 吹き上がった

「ちょっと機嫌悪いんで……」

 ラキである

 ラキの微笑みは まわりの温度を 数度下げた

「解」

ばず……ん

 電流の 柱が行く筋と降ってくる

「ちょ!」

 マニが叫んだ

「私らの事わすれてるでしょ!」

「派手……だねぇ」

 と 松末

 しかし その顔は 笑っていた

ど……!

 神気の雷が 翁鬼の全身を焼く

 生き物の焼ける匂いが 満ちた

 び……

 蛍火の 爪が衣を裂く

 神気が 全身の血管を喰いはじめている

 このままでは 喰われる!

 蛍火の 身体が跳ね様に 開いた!

 そして メキメキと 巨大化して行く

 がん!

 巨大な槌の様な腕が ラキを 打つ!

 衝撃波だけで ラキの 身体が弾けそうだ

「ふーん」

 しかし間の抜けたラキの 声音は 微笑みすら唇にはる

「神龍」

「承知」

 宙が鳴いた

 爆流のような 電流の嵐が 駆け抜ける

「きゃ」

 雷光に令が震えた

「お前さ俺らまで殺す気だろ」

 松末の声がする

「あんたならやれる!」

 ラキが笑ったようだ

「あーあ!火ついちまったみたいだな」

 松末が 筋肉にくるまれた 肩をすくめた

 どん!

 雷光が 次々と突立つ

 大地が

ずず……と

 震えた

 大社の上空に 神龍の 眼が 輝く

 カララ……

 宙から巨大な 柱が蛍火の 身体を打った

 ばじゅん!

 蛍火の 全身が弾ける

 バシャ……

 ぬめる血が 滝のように降った

「あんたらってさ……あんなのいんの?」

松末が 首を竦める

「アラバギは風龍……私は火龍……イトは土龍」

 マニが天を指す

「ラキのは あれね」

  にっこりと笑われても

 恐怖しかない

「4人いないと開封出来ないのが難点かしらね」

 うふん

長い睫毛がウインクした


 第2章 開戦


 のく……り

 神龍の 神気が 蠢く邪気に喰われていく!

 朱雀!

 ラキの神気の 束が 捩れて消えた

「天照大御神」

 令の結界が弾かれる

 邪気の 触手は 肉色を 蠢かせて

 神龍をすら食らった

「令!」

 アラバギが 弾かれた令を受け止める


 ぶちゅ……り

 肉の 触手が 神聖なる社を 食らっていく

 うぉおおお……!

 空間が呻いた

「朱雀!」

 イトが 吼える!

 四精霊の 身体から神気の 束がかけのぼった


 神気の束が曇天に 光の渦を示した時

 ぴぃぃ!

 上空から純白の鳥が舞い降りた

 ゆるり ゆるり 空を滑って来る

 ぴぃぃ!

 また鳴いた

 赤玉の 瞳がきら……と 煌めく

 鳥は 四精霊の柱を纏わり降りながら令に 宿る

 ごぅ……!

 渦がはじけた

 その 赤玉の瞳を令は知っている

 大社の 鳥居に居た あの鳥だ

 ドクン

 魂が脈打つ

 神気の芽が芽吹くように目覚めていく

 この 波動を 令は知っている

 高天の神のゆりかごの あの揺らぎ

 そして

 輝く光

 どこからともなく 天を滑る笛の音

 鈴を振るような 麗しい声音

 嗚呼 魂の人

 令が

 覚醒した

 額に 太陽の 刻印が 現れる

 令の足が 玉砂利を 踏んだ時

 りーーーーーん

 と あの鈴の音がした

 そして 神気の爆流が 5つの束になって

 上空の 朱雀を うち拉ぐ!

 ぎぃぃいいいいい!

 腐汁を 散らす音と ともに 絶叫があがった

 りーーーーーん

 また 鈴の音

「こんなもんじゃないわね」

 とマニ

「ああ」

 アラバギは 中空から目をそらせない

 ドクン

 心臓の 鼓動と共に 耳が脈打つ

 神気の塊が 令の中にある

 この気

 静だ!

 そして

 天照大御神

 瞬時

 邪が弾けた

 腐った汁を撒きながら 触手の 蟲が 這う

 朱雀が その姿をあらわした

 ぎょろり……

 腐れた 眼が 黄ばんだ 目を向ける

 のくり……

 喉が鳴った

 ……恋しやのう姫巫女

 そなたを 汚しとうて 汚しとうて

 ぐくり

 朱雀の口角が上がる

 ……のう?

 そなたを愛する幻影にはあったのか?

 いやらしい……

 蟲が 這うような 睨める様な問いに

 令が 身震いした

……のう……

 触手が 淫猥な 滑りを もって 令へとのびる……!

 ドクン

 令が 震えた時

 逆巻く神気の風が現れた

「バギ!」

「誰であろうと お前を 怯えさせるものは容赦しない」

 薄荷の髪が神気に巻き上げられて黒い奔流のようだ

 バギ!

 令の瞳を涙が伝う

 わかっていた

 そう

 バギの心が拓けている

 あの 閉ざされた檻が なくなったのだと

「令!結界をはれるか?」

 やわらかだが 芯のある その声は アラバギだ

「うん 」

 令が 神気の蓮を呼ぶ

 蓮の 頭上には 黄金の 太陽がかがやいていた

 きら……

 太陽の露が 蓮へと 落ちる

 りーーーーーーーん

 空間を また 鈴が鳴った

 きんっ

 見事な結界が そこに発現した

 5つの 神気の柱が

 輝きを 強める


 のくり……


 朱雀が かぱりと 口を開けた

 それは空間を喰らいながら 鬼の血ですら啜ってゆく

 のくり……のくり……

 至極美味しそうに 血を喰らいながら 朱雀が笑った

 ……うまかりし……

 きしゃあ……

 息が腐った血の匂いで 満ちている

「共食いってか」

 松末が顔をしかめた

「趣味悪いねぇ」

 仲間ですら喰らう その姿に 悪寒がする

 ばじゅん!

 弾ける瘴気の 束が 朱雀の 根から 放たれた

 おろおろ……

 空間を 時ですら喰らいながら それは這い進む

 そして 令の 結界に触れ

 怯み しかし それは 喰らった

 令の 結界を喰らうようにして 触手が這う

「いや!」

 令が 数歩後じさる

 マニが 令を 支えた

「大丈夫!バギに お・ま・か・せ」

 パッチン

 茶目っ気たっぷりに ウインク

「だから令ちゃん!胸をはんなさい!あんたしかいないんだから!姫巫女!そしてね」

 マニがそっと耳うちした

「あんたら両思いよ」

 令の 背が 弾ける

 記憶の 封印が 解けた

 アラバギ……

 アラバギ…………

 アラバギ………………

 令の 胸元に 組まれた手が 全ての 鎖を 断ち切って行く

 アラバギの 口付け

 あの時も

 あの時も

 令の 心を喜びが満たした

 嗚呼

「マニ……時と場所をわきまえろよ」

 ラキが 苦笑する

「まだるっこしのは きらいなの!」

 明るく 晴れ晴れマニが微笑む

 だからね令ちゃん

「安心して自分を信じて戦いなさい」

 あたたかい……その笑みが 令を とろかす

「マニ……頼む今は その場合ではないんだ 」

 アラバギは 声から察するに 真っ赤だ

「あらぁ照れてる場合」

 マニが揶揄う

「あんたらは まだるっこしいから 思い残すことなく心から戦いなさい」

 マニが 跳んだ

 焔の 柱が 神気の 柱となって マニを包む

 ばづん……!

 マニの 封印が 弾けた

「あのな 脈絡もなく喚ぶなよ!」

松末の嘆息

「火龍招来!」

 神気が呻き 中空に緋色の 艶やかな鱗を もつ 龍神が 現れた

 ごう……

 空を 焦がして火の龍は 蠢く

 そして 玉の眼を開けた

「ハーイ ダーリン」

 ラキが頭を抱える

「あのさ」

 アラバギも 心底困ったふうである

 りーーーーーーん

 神気の鈴がまた鳴った

 ばじゅん!

 その 瞬間を すら裂いて 朱雀の触手が迫る

「ダーリンお・ね・が・い」

 マニの 可愛いお願いに 火龍が 答えたか答えなかったかはわからねど 火龍の 口から爆炎が放たれた

 どおおおお……

 音が音を喰らうようにして焔は 朱雀に吹き付ける

 ぎぃぃいいいいい!

 全ての触手が 身を引くが 瘴気の 奔流が 火龍を 囲い込む

 うぞり

 瘴気が蠢いた

 そして 火龍を喰らおうとする

 しかし転瞬にして 瘴気すら総動員するなにかが 朱雀の 身を襲っていた

 そう

 アラバギの 風龍

 真空の刃が 多重に 朱雀の根を刻んでゆく

 腐汁を 撒きながら 朱雀が 絶叫した


 ぼえぇぇー

 朱雀の 体を焔が 包む

 ジリジリと 皮膚を焼いた

 肉の焦げる嫌な匂いが充満していく!

「殺った」

 誰もがそう思った時

 だがしかし

 油断なく朱雀を見据える目があった

 イトである

「簡単すぎる……」

 ぎりり……

 彼は奥歯を噛み締めた

「土龍」

 そして呼ばわったのである

 大地を 白砂利を砕きながら

 土龍は金の鱗をあらわした

「控えていろ」

 用心深い 重い声音

「イト」

 アラバギの 目線に 頷く

「あいつは来る!この程度の奴じゃない!昔より何百と 強くなっているはずだ」

 イトの よみは はたして当たるのか

 4柱の 神気の束は 緩まずに 沸き立っていた


 がおっ!


 マニの 脚を 背後から 掴むものがある

 それは密やかに 背後へと忍んだ 朱雀の触手であった!

 やはりあちらの朱雀は陽動であったのだ

 ぎち……

 触手は マニの妖艶な身体を駆け上がり

 ギリ……と しめた

 息が……出来ない……

 マニが手を伸ばす

 しかし 触手に締め上げられ 弱まる血行は その手を許さない

 あっという間の 出来事だった

 マニ!

 叫ぶ間もなく次々と 3人までも呑まれた

「土龍いけるか?」

 イトが 聴く

「承知」

 大地が呻いた

 が……どん……!

 玉砂利を 空へと巻き上げて

 土龍が 神気の刃を放つ!

 がおっ!

 刃は 全ての触手を ズタズタに 引き裂いた

 その触手は 腐れた液体を 撒き散らしながら 砕け散る

「令!頼む」

 しなしなと崩れ落ちる3柱に 令が走りよった

 3人は失神しているだけであったが ひどく顔色が 悪い 令が 癒しの蓮を 喚ぶ

「松末いけるか?」

イトが 神気の嵐を 纏いながら 頼もしい黒い男に声をかけた

「おうよ!」

 彼は武者震いでもしているのか ニヤリと口角を 上げる

「多分あんたと 同じはずだ……要はあれだろ神気をのせりゃあいい!」

 言い終える前に松末は跳んでいた

 人間とは思えない 凄まじい跳躍

 イトが続いた

 がっ!

 松末の 蹴りが 朱雀の胴体に めり込む そして 空で回転をかけて 連蹴り

 右左と 埋めて 3撃!掌底

 めきょり……

 朱雀の腹が凹んだ

 松末の 攻撃が 当たる度に 朱雀の乱雑な歯の隙間から

 腐った汁が 弾ける

「うぬが人間が」

 朱雀の 眼に瘴気の渦が灯った

 がおっ!

 松末の脚を 朱雀の触手が 一気に引き絞る

 凄まじい勢いで 松末の体は大地にたたかれ……砕け散る

 しかし その瞬間を ラキの神龍が 救った

 正に紙一重である

「ったく油断も隙もないやね」

 松末が悪態をつく

「ごめんね!松末さん」

 マニが華やかに笑んだ

神龍の背には 令を含め3人の柱が乗っている

 「行けるか」

 薄荷の香りが問う

「ああ」

 松末は口角をあげた

「いってやろうじゃないの!」

 神龍が 中天に達した時イトの 大きな背中と 合流する

 イトは何か考えていた風で

「松末頼みがある!」

 と……呼ばわった

「あ……?」

「我らは4元素だ……が しかし 5元素束ねたい」

 ガシガシ

 松末が 盛大に 頭をかいた

「あ……あれか 俺に金属性の柱になれってね!」

 にや……

 男は 誰もが 見惚れる 笑顔を唇に貼った

「いいね!高天の神さんにしちゃ 捻り効いてるじゃないの」


 松末の 力強い 腕が イトの 背を打つ

「五芒だ」

 組めるか?

 松末の 指示がとんだ

 木属性はどうする?

「アラバギができるはずだ」

 イトが答えた

 木・火・土・金・水

 5つの神気の柱が 激しい奔流を 生んで 天へと かけ上る

 ズン……空が呻いた

 全ての 龍神が 束ねられていく

五芒が 回転を 始めた

 その中点に 令がいる

「風雷神!」

 ラキとアラバギが 声を束ねた

 風龍と神龍の 双頭の龍が 雨を喚び 嵐を招く

 空間を激しい落雷が満たした!


 どしゃぁ!


 凄まじい雷一閃

 大社の 結界すら切り裂いて 落雷は 朱雀を打ち据えた

 焦げた肉が ボロボロと 砕けていく

朱雀は 悲鳴すら上げる間も無く 地へと 落ちていった

 そして


 ばじゅん!


 玉砂利に 叩かれる

 腐汁が 微塵に散った

「封印する!」


 イトが手印を組む

 太古の文字が 刻刻と輝いては消える

 ドクン……

 五芒の星が脈動した

「こおおお……」

 朱雀の 空洞と化した喉が伸びる

 それはまるで 死霊の歌を歌う様だ

 朱雀の喚ぶのは 鬼か死霊か!

 その肋骨が かぱりと開いた

 その中から現れたのは 暗天の……暗天の蟲

 乳色のそれは うねって 波と化し

 朱雀を とろかした

 ぼぉ……

 朱雀の 全てが 堕ちていく

 目が 鼻が 唇が 干からびた木乃伊のようになりながら

 砂と化す

 しかし……朱雀

 その体は瘴気に没した

 その瘴気は うねる波となって迫り上がる

 聖なる五芒が その瘴気の 渦に対峙した

 それは全ての依代!

 人形の瞳

 歪んだ何か

「朱雀は こいつに自分を喰らわせた?」

 イトが呻いた

 そう あの人形達の瞳

 無表情に 微笑む唇

 恐ろしいばかりに 空虚な者共

 ……うふふふふ……

 少女の 微笑む声

 それは聴く者の 背を悪寒となって駆けた

「あの時の人形……!」

 令が その人形の名を呼んだ

 ……ねぇ?

 ……遊んで?

 一体の フランス人形がグリンと 顔を令に向ける

 それは恐ろしいばかりの速度で 恐怖を誘う程だった

 ……おじいちゃん……殺しちゃったの?……

 ……遊んでくれたのに……!

 人形の 声音が 唱和する

 ……遊んでくれ……たのに……

 歪んだ声が 空を割った

 人形の 目が上天を向き メリメリと 回転する

 そして血の涙を流した

 ……遊んで……ねえ……?

 お兄ちゃん……お姉ちゃん……

 ねぇ……

 カタカタ

 人形達の口が鳴る

 そして呪いの歌を 紡いだ

 ……私ね に……んげ……んの子に 焼かれたの……

 ……捨てられたの……

 ねぇ……おじいちゃん……遊んで……?

 けけけ……

 人形が 笑う

 そして……その人形が再度……口を開いた 瞬間

 弾丸のように 瘴気の 礫が 飛んだ

「吽」アラバギの 形の良い唇が 言霊を放つ

 空間が鳴動し その礫は無力に成る

 あまりにも無力な それは はたりと 地へ落ちた

 ……遊んで……?

…………………………

 アラバギの頬を涙が切る

 同情するのでも無い何か……

 それはきっと 朱雀の 触れた何か……!

 ……あぞんで……!

 全ての人形が 鳴動した

 ……おじいちゃん!

 よれて もろもろと瘴気は 崩れる

 ……朱雀の愛した人形……

 人喰らいの 御霊 その彼が最後に見た景色は?

 全ての 瘴気は 祓って消えた


 五芒の星は 涙する……!

 切ない何か?

 触れては いけない何か?

 それが 神気の 穹に 満ち満ちていく

 空を白い鳥がゆく……

 その鳥は 人形達の 魂を導くように 高天へと飛んだ

 令の足が 玉砂利を 踏む

 そして アラバギが イトが…ラキが 松末が順に 地を踏んだ マニの革のサンダルが 玉の砂利を しだいた時

 その 人は現れた

 細身の 薄蓬

儚い少女の あの方

「天照大御神」

 ラキが控えた

 そして一同が片膝をつく

 そして目をふせる

「良くやってくれました……」

 コロロと鳴る土鈴の 優しい声音

 それは 一同の 心に残った澱すら拭い去った

「アラバギ……令……良く耐えましたね」

 もう良いのですよ?

 咎めもなく 赦す声音に アラバギが顔をあげた

「1つ我儘を御赦しください天照大御神」

「我が君」

 四精霊が声を揃える

「アラバギを人として生かしてください 」

 マニが 祈った

「それは?令?貴女の願いでもあるのでしょう?」

 太陽の 尊が 微笑んだ

「はい……天照大御神」

 令の 頬をハラハラと 涙がすすぐ

「令」

 アラバギが 令の 頬を撫でる

「良いでしょう……わたくしは 変わるのを恐れて変化から逃げて来ました……イト……静?」

 いるのでしょ?

 天照大御神が 可愛いらしく首を傾げる

「あなた方も 共にいらっしゃい」

 高天の民に 詫びさせましょう

 ころりと笑う

「そしてね慎を解放して差し上げましょう」

 あくまでも優しく 彼女の 白い手は慎の 前髪に触れた

「忘れて良いのですよ?」

 しかし別の意思が目覚めた 慎は 首を横に振る

 ……慎……

 アラバギの黒曜と茶水晶が かち合う

「アラバギ……令を 不幸にはするな?」

 低いが強い声音がアラバキと 令を 包む

 そして慎は 心の底から笑ったのだった


「アラバギ……」

 令が そうっと その背にふれる

 今日は満月

 春の月

 2人は寄り添って月を見ていた

 彼の薄荷が 心地いい

 そしてアラバギの 唇がおりてくる

「令……」

 令の 朱唇を 濡らして熱いくちづけ

 それは幾度と無く角度を変え 甘く情熱をもってくちづける

 令の 手をアラバギの 長い手指が包んだ

 そして 彼は令をベッドへと押し倒す

 熱い身体

 令の身体も 熱い

 アラバギの しなやかな裸身が 令の裸身を 包む

 そうして彼は

 たまらなく吐息を漏らす令の 唇を 再び覆った

 アラバギの 舌がいやらしく 令の 舌に 絡み

 そして粘膜の触れあいは

 ぴちゃ……りと音を立てた

 アラバギの芯が燃えている

 令の 身体をそうっと

 思いやりながら彼は令に入って来た

 熱い情熱

 令は 陸にあげられた魚のように息すら忘れてしまう

「痛むか?」

 あたたかい彼の手が 真っ赤な頤を 甘くすぐった

 そして熱いくちづけ

 令の くびすじには アラバギの 吸った唇の 跡が華のように 残る

 彼はそうっと 腰をすすめた

「あ……つ!」

 令が弓に背を反らせる

 アラバギの 情熱は 令の 深い部分で 脈打っていた

「あ……」

 自分でも いやらしいと分かっているのに……令の 唇はいやらしい声を上げていた

 そしてアラバギの芯が令の 欲望に濡れ

 そっと動く

 月夜は 彼らの裸身を布団へと 刻み付け祝福した

「ふつ……」

 アラバギの 唇が 令の 舌を吸いながら

 動きを早める

「あ……アラバギっ」

 令が 上り詰めると 同時に アラバギが 身の全てをはなった

 熱い塊が 令の熱い部分にそそぎこまれる

 令はアラバギを 呼びながら

 何度となく達した

 熱いアラバギの 身体に令は溶けてしまいそうだ

情熱が突き動かすまま に2人はお互いの身体を探りつづけた




朝……

 令はアラバギの腕の中で目をさました

 アラバギは 長いまつ毛に縁取られた 黒曜を閉じ

 眠っている

令はアラバギの裸の胸をそうっと撫でた

 細身なのだが しなやかな筋肉を感じる

 令はアラバギの 薄荷を 胸いっぱい吸い込んだ

 ああ……

 幸せと言うなら!まさに今なのだ

 令は 黒髪をきゅ……と 握る

 そして寝息をたてるアラバギに接吻した

 そうっと……そうっと……起こさぬように

 令が顔をはなそうとした時

 アラバギの 長い指が 令の頭を抱え込んだ

「もう……おしまいか?」

 茶目っ気たっぷりに 微笑まれてしまい

 令は真っ赤になった

「起きたの?」

「ふ……」

 アラバギが笑った

「令……」

 彼は令を再び押し倒す

 そして唇がおりてきた

「ずっと……ずっとこうしたかった!離さない」

 アラバギの唇が

 令の乳房へとおりる

「あ……!駄目!」

 令は赤い顔を 更に赤らめて快感の 波に逆らった

「だ……だめっ!」

 アラバギの手のひらで乳房がかたちをかえる

 次第に次第に……

「アラバギ!」

 令は 逆らえず アラバギとの接吻に応じた

「ねぇ……バギっ」

 問いかけている時に熱くかたいアラバギの彼そのものが令の中に入ってくる

「ダメ……」

 腰がとけてしまいそうだ

 ぎしっ

 2人の体が揺れる度

 シングルベッドは ぎし……と軋む

「あ……」

 令がそって アラバギに抱きしめられた

 そして絶頂

 令の 芯で アラバギは思いを 放った

「バギ……」

 令は アラバギの 肌にしなだれる





 ゴールデンウィークの初日の 今日

 今日は 6人で サービスエリアに行こうと 約束していた

 彼等が封印の眠りにつくまえに

 アラバギと 令 は起き抜けに愛し合った為か気だるさを 隠せなかった

 2人は そっと階下へおり 綾子に声をかけた

「おはよう」

 綾子の 笑顔が何だか 遠くにかんじる

 自分が成長してしまったせいだろうか

 きゃわん

 プーちゃんが アラバギに餌の催促をしている

 どうやら プーちゃん

 アラバギになついてくれたようだった

「オーオー起きたかね?」

 悟が 手紙を抱えて敷居をまたぐ

「あ……!」

 しかし気恥しい気がして 令は顔をあげられない

「ゴールデンウィーク すごーく混んでるらしいじゃないの」

 綾子が 白米に麦をまぜご飯をよそってくれる

 おかずは ひじき煮に 白菜漬け

 秋刀魚の塩焼きに 大根の味噌汁

 いつもの笑顔のはずなのに

 なんでだか こそばゆい

「松末さんの車でいくのよね?」

 そう肩に手をおかれて

 令は こく……と 頷いた

 大根おろしに 刻みネギが美味しい

「ラキくん達もいくんだろ?」

 悟が 新聞片手に顔をあげる

「はい」

 と アラバギが うけた

「よろしくいってな」

 悟はアラバギと令を祝福し 一緒に住むにあたり

 アラバギと 令は 籍を入れた

 事実上の 結婚なのだが 何だか こそばゆい

 きゃわん

 プーちゃんはアラバギの 膝に飛び乗り

 しっぽを ぱたばたと ふった

「すっかりなついたわね」

 綾子がうれしそうだ

「はい」

 アラバギの 薄荷は何時も爽やかで愛おしい

 令も 指をのばすと

 プーちゃんの頭を こちょこちょした

 「きゃんきゃん」

 プーちゃんがアラバギの膝から滑り降りると

 玄関に向かって吠える

「来たみたいだな?」

 アラバギは お茶碗などを 手早く片付けて にっこりとわらった

「うん」

 令の心は 皐月の空のように晴れ渡っていた




 終了


番外編

 イケイケ 探検隊


 晴天!

 そしてみんなの笑顔

 令は 今日を楽しみにしていた

 ジーンズに 桜色のカッターシャツをあわせて

 イヤリングなんかをつけてみた

 ラピスラズリのそれは マニのおすすめである

 マニは令に一から女らしさを叩き込んでくれて

 口紅の選び方から

 シャドウの塗り方

 アイラインなんかも施してくれる

「おはよう」

 華が咲くような笑顔

マニである

 ううーん

 相変わらず綺麗だ!

 男性の目をひくことまちがいない

 彼女は シャツブラウスに メンズジーンズという

 いで立ちだが

 シャツの胸が窮屈そうだ

 ボタンが飛びそう

何故か令がヒヤヒヤした

 ラキは慎の所に泊まっていたが

 白いカッターシャツにジーンズ

 ナ○キの靴とあわせている

 小脇には

 慎のプレゼントなのか

 セカンドバックを持っていた

フワフワのウェーブの髪は 肩口で 束ねて右側に

 垂らしてある

 イトは 慎が参加している

 細いストライプのシャツに白いスラックス 革の靴である

 松末のみが いつもと同じ黒1色だが シャツがサテンになっていて

 黒のスラックスであった

 靴は革靴

 それもまた黒

 こだわりらしい

 アラバギは黒髪で 薄いグリーンのシャツに ジーンズだ 靴は悟のプレゼントで ナ○キのくつである

 松末が BMWの ステーションワゴンのドアを開けた

「わあ!」

 令が歓声をあげる

 オプションで7人乗りにしたワゴンは

 とても快適だった

「かっこいい」

 令が 見回す

「こいつ買うのに禁煙しろって 妻にいわれてね」

 松末が頭をワシワシとかく

「たかそうだもんなー」

「ああ 腹パン一発 妻からもらったよ」

 さあていくか?

 一同を見回して

 松末は

 車に乗り込んだ

「はい」

 令はにっこりと笑った

「いい笑顔だ騎士くんもね」

 松末が令とアラバギをみつめる

「あんときゃ どーなるかと思ったもんな」

「あ……う……すみません」

 真っ赤になる令達に 松末が 茶々をいれる

「ガキ出来たら名付け親にならせてな」

 ふっ

 笑って見せた松末に

 アラバギと令が真っ赤になった

「…………………………」

 さあて乗った乗った

全員がのると 流石に迫力だが

 スタートはスムーズだった

「ラキ?」

 松末がとう

「え……」

「そいつも連れてく気か?」

 脇をみると

 ちょこんと しっぽふりふり

 プーちゃんがいた

「え……?」

きゃわん


 プーちゃん!自分も行く気満々の顔をしてちょこまかと後部座席を駆け回っている

 ちいちゃな しっぽが嬉しそうに揺れた

「いつの間に?」

 令がひょいと抱き上げると松末は

「ま……いいさ!」

 にっこり笑ってくれる

「はい」

 令はそうっと下ろしてあげた

 後部座席の 足元でプーちゃんは得意気だ

「エッヘン オイラ 偉いんだそ」と

 胸をはっている

「ね?令ちゃん美味しいお菓子しいれたの!みんなでたべない?」

 じゃーんと スーパーのビニールに山盛りのお菓子を突き出す

「あ……ポテロング!」

 そう叫んだのは愼

 令もそのお菓子は大好きで

 でも歯に詰まるのが悩みであった

「まぁ 呑気に始めといてくれや」

 松末が

 手をひらりと振った

「これどうです?」

 アラバギが

 コーヒーの無糖を 手で渡す

「おー!サンキュ 気が利くね」

 アラバギは松末の指示のままに

 ドリンクホルダーに缶を入れた

 松末の車の中は どんちゃん騒ぎ

「おーいカーブでウィンカー出すの忘れるから少しだけ声をダウンしてくれい」

 からかい半分

 本気が 半分

 松末は髪をかきあげた

「はいどうぞ」

 アルフォートの紅茶味をむいて松末に渡す令

「まったくまあ!どうなるんだろーな」

 苦笑いの松末であった

 右に曲がると高速入口だ

 結構な坂になっていて

 らららら……と壁に響いている

「松末さん ETCもってます?」

「勿論な!」

 と ポンとカードリーダーを叩いた

 何だか皆盛り上がりまくっていて

 ジャズでもないか……と 松末は

 ラジオを つけた

――シャンパリーズどこ行こう!――

 かわいいタイトルコールと共に

 元気なジングル

令が身を乗り出した

 ――このゴールデンウィークは どこもこんでますね――

 ――ねーっ――

 軽快なトークと共に

 ヒット曲が流れる

 ――なんかね……最近 サービスエリアに水族館つけちゃうとこがあるみたいでぇ――

「ふーむ」

 松末が唸った

「近くだ寄ってみるか?」

「え?いいの?」

 とマニがうれしいわ と笑う

「まー今日くらい遊んだっていいだろうよ」

 ラキはじゃがりこをカリカリとリスのように齧りながら破顔する

「魚が陸で見れるなんて やっぱりいいねー」

 とても楽しそうである

 プーちゃんが ラキの膝に飛び乗った

 プーちゃんどうしよう

「ドッグランで遊ばせてやろう」

 松末が ふっと笑った

「え……わんちゃんもいるの?」

 ラキが それこそ全力で身をのりだす

「あー……飼い犬を遊ばせるスペースがあるんだよ」

 まあエチケットとして

 トイレ用の袋は持ってかにゃあならんけどな

 松末の説明にラキのメーターはうなぎのぼり

「僕はプーちゃんといる」

 にこにこ顔だ令はポテロングを

 かりかりかじると

 本当にラキは動物好きね

 と微笑んだ

「僕も1本もらうよ」

 愼がポテロングを摘む

「じゃそこで決定でいいな?」

「そろそろ飯の時間なんだから……菓子はひかえるように!」

 年の功の威厳で松末に言われると何にもいえない

「はーい」

 そそくさとかたしはじめて

 令は ちらとミラー越しにみつけた

 松末が 指輪をしている?

「松末さん?それって?」

「何かなあの戦いの後から大事な物を失いたく無くなったんだ……だからさ」

「わー!」

 ダブルおめでたじゃない!

 マニが歓声をあげる

「いや……その言葉はちがうとおもうぞ」

 松末があかくなった

 ま……籍入れんのはめでたいけどね

 耳まで赤くなってる

 かわい……

 令はおもった

「さて……サービスエリアだ!入るぞ」

 ステーションワゴンはサービスエリアの

 カーブを曲がりながら入っていく

「確かここ……」

「ん……?」

 令の 声に松末が聞き返した

「アップルパイも美味しんだって」

「お前らな!もう時期昼飯だってのに まだたべるのかよ」

 あきれた声の松末に

「てへへ」とラキがわらった

「ここには美味い海鮮丼屋があるんだよ!」

「はーい」

 令が そそくさと片付け始める

 燃えるゴミ 缶ゴミ ペットボトルとわけていく

 よっし!

 ガッツポーズをきめてみて

 アラバギに笑われた

 そんなわけで

 駐車場に停めて トイレ休憩を済ませたあと

 水族館希望者は中

 ドッグラン希望者は外とわかれた

 令はプーちゃんが心配だったため外にいることにする

 ラキは勿論ドッグラン組

 プーちゃんが

 とてとてと 他のワンちゃんに寄っていくのを眺めていた

「きゅーん」

 ちょっと寂しげに鼻をならすので

 ラキが

 柵のすぐ側でひかえてくれている

 令はみんなとの写真をたくさん携帯におさめた

 全員の笑顔

 そして

 人間として生き人間として有限な命をえらんだアラバギ

 彼のためにも沢山残してあげたい

「と」

 ラキが立っている柵の傍にワンちゃん全員集合している

 クンカクンカと ラキの指の匂いを嗅いで

しっぽをフルスイングさせている 大型犬も小型犬も関係なしモテるのだ

「あらら……」

 マニが素っ頓狂な声を上げる

「ラキってば 浮気はだめよ!」

 マニの拳骨が降ってくる

 そうラキとマニは 晴れて夫婦になったのである

 なんだか水と火の性質上 不安なのだが

 うまくやっているようである

 全員が揃うと海鮮丼屋さんへ

各自好きな魚を取ってのせてたべるお店だが

 勝手のわからない

 尊組は

 すわっていて令が代わりにとりわけに行ってきた

 ……マグロ サーモン イクラ いか エビ 鯛数々あって

 まあ

 オーソドックスなものをチョイスする


 プーちゃんにはお外でつないで 待ってもらって6人は美味しい海鮮丼をいただいたのだった

 そこで出た話題

 次どこ行こう?

 ワンコ同伴OKなカフェがある 2つ先のサービスエリアを目指すことに決まった

「ワンコ同伴!めちゃ楽しみ!」

 ラキがわくわくしている

 そして令もだ

 6人はお会計すませると

 サービスエリア内で売っていたという

 ワンコ専用クッキーをプーちゃんにあげる

お手 おかわり おまわり

 キョトン?

 お手 おかわりまではクリア

しかーし

 犬生は そんなにあまくはなさそうだった

「プーちゃんおまわり!」

ちょいん

可愛いおしりを地べたにおしつけて

小首をかしげる

「ありゃ」

かっくり

 まあ

これがプーちゃんなのである!

よしなに よしなに!

小首がちょこんと傾げられる度に6人は メロメロビームを食らっている

「もうしょうがないわね」

 マニに抱き上げられて

 プーちゃん甘えまくる

 嗚呼かわりたい

 そう思った殿方はラキだけではあるまい

「マニさんいい匂い」

 令がくんくんする

「あ……これよ?」

 ポケットから

 香水の小瓶を取り出す

「令ちゃんには大人っぽすぎるかな?バラの香水よ」

 令にはアクアノートが似合うと思う!

 マニが微笑む

「おいこら!ご婦人諸君おいてくぞ?」

 松末がステーションワゴンから呼ばわる

「はーい」

 2人はきゃっきゃと乗り込んだ

この2人もなんである初対面最悪だったが

 ものすごーくなかがよくなった

 うーん?

 松末が苦笑した

 そうして

サービスエリアをでると

次の翁サービスエリアを目指す

「楽しみねわんちゃん同伴OKなんでしょ?」

マニが肘でラキを小突く

「もちろん」

 うーん

 あの夫婦 この夫婦である

 令がクスクス笑った

「松末さん」

 アラバギが改まって声をかけた

「ん?」

「指輪ってどこにうってますか?」

「あ……ああ 宝石屋やらなんやら銀製品でいいなら色んな店で売ってるけど?ほしいのか?」

 松末が視線を流してアラバギをみた

「はい!令とお揃いにしたくて」

 赤くもならず はっきりいいきったアラバギに 令の方が赤面した

 おー!

 やすいみせならアジアン雑貨とかかな?

 松末がわらった

 よってみるか?

 願ってもないとアラバギ

 翁デパートにアジアン雑貨あったっけかな?

令も思い巡らせてみる

「あります1階に」

 跳ねる令に マニがクスクスとわらった

「よかったじゃない?」

「はい」

 令がうきうきを隠せない

愼はそっと顔をそむけた

 恋とはそんなに直ぐに忘れられるはずも無い

 ラキはプーちゃんの前足をつかんで

 プニプニと 肉球で遊んでいる

 マニは横目で……ちょーっとすねてるようだった

 翁サービスエリアに入ると

 犬同伴カフェをめざして

 ラキが駆け出した

「あーあ……あいついくつだかね」

「まだまだ子供でしょ」

 マニが髪を撫で付ける

 後の5人はラキの陣取ったテーブルにすわるとメニューをながめた

「ドックミルクと 犬用パンケーキかな ね?プーちゃん?」

 ラキが覗き込む

 きゃわん

プーちゃんが なんでもカモンな 顔をしている

「そうねーって私らも注文しなきゃ」

 マニが 目を皿のようにしている

 そうねーティーソーダおいしそうよね

「はい」

 と令

 愼は 紅茶とチョコケーキにしたらしい

「私はアイスココアにティラミスかな」

 これは令

「俺はブラックコーヒー ホットで濃いめで頼む」

 松末の横顔に見とれていた店員さんは はっと オーダー表にかきこむ

 ハーブティーをミントで

アラバギチョイスだ

 ラキはシナモンティーとバタートーストにしたらしい

「お前らな……まるくなるぞ?確実に」

 松末にからかわれて

 マニがペロッと舌をだした

「かしこまりました」

 美形ばっかりの このテーブル

 周囲の女性陣の視線が集中

 令が首を竦めた

「あれ?」

え?

この声?

「あの翁公園でお会いしましたよね」

 コーギーのギンちゃんと

 黒柴のふうちゃん そして ピカピカ笑顔のお姉さん達

「あら偶然」

「きょうはどちらに?」

 お姉さんが聴いた

「この後は 翁のデパートに行くんですけど」

 令がギンちゃんのあたまを ポンポンした

「そうなんですか私たちは温泉です ペット同伴のホテルとれたので」

 すごーくたのしそうだ

 ラキが鼻の下を伸ばしていて

 マニから拳骨をもらう

 お互い気をつけましょうね

 歩み去る2人と2匹の後ろにココアがしたがっている

 大丈夫そうね

 令は胸を撫で下ろした


マニはティーソーダを こくんと飲むと ストローをカランと回した

 そして 令に耳打ちする

 ラキのバカ

 なんで私をみてくれないのかな

 それが 恋をしている女性らしくて

 令は嬉しかった

「だって結婚したじゃない」

「うん」

 マニのブラウンメイクの 瞳がティーソーダの炭酸を見つめる

「マニさんは 最高よ!ねぇラキ」

 突然声をかけるとラキは 目を泳がせた

「え……そりゃあさ……まあ……」

何とも歯切れが悪い

「ラキのばか!」

 マニはパシャンとコップの水をラキに浴びせた

「だいっきらい」

 松末さん 車にもどっていい?

 勢いのままに

 マニは立ち上がり 肩をいからせる

「いい!わかれてあげる!」

 スタスタと車を目指す

「お前ね」

 松末が ラキの頬に拳骨を押し付けた

「ああいう時はフォローだろ」

「だってマニはマニだもん」

「答えになってないだろう」

 アラバギが ハーブティーのカップを 唇に つける

 1口のんで

 ため息をついた

「お前は どうして本気になると 何もいえなくなるんだよ」

とアラバギ

「だってさ」

 ラキは真っ赤である

「好きな気持ちはさ」

 もじもじ

 フェミニスト ラキ一大事であった

「謝った方がいいよ」

 愼が 立ち上がる

「よんでこようか?」

 愼の 動きにラキの思いが挫けていく

「いいよ」

 だって

 だって

 信じちゃくれないもん

「ラキはね なんともおもわないと フェミニスト ラキでいられるけどね……好きになるとからきしだし」

 令にまで弄られて ラキはますます ちいちゃくなった

「好きだよ!大好きだ」

「私に言い切っても 仕方ないだろう」

 アラバギが ピンッとラキの おでこをはじく

「バギだってさ……最近は令に 積極的だけど最初は……」

 まきこむなよ

 松末が コーヒーをぐっと飲み干して

 立ち上がった

「姫さん待ってるから 車開けにいくな」

 600円を置いて大股で ステーションワゴンを目指す

 ラキは ますます もじもじする

「あやまろ?」

 令が 席をたってお会計に行ってしまい

 ラキは 涙目であった

「なあ バギ」

「なんだ」

「俺マニ幸せに出来るかな?」

 アラバギは くすと 笑う

「それをマニに聞けばいい!」

 ポンと 肩を叩く

 ポン

 プーちゃんが ラキの 靴に 前足をのせた


「バギあのさ 初夜ってさ」

 爆走で ラキの 質問が アラバギの 耳に寄せられ

 アラバギが 咳払いした

「へ?」

 もどった 令が 意味深な男性二人を見つめる

「ね……やっぱり あの……」

 ごっつん!

 アラバギの 拳骨が ラキの 脳天に落ちた

「まだだったのか?」

 結婚するのー!

 マニの 可愛らしい 発表から 軽く10日は たつんである

「だってさ」

「そりゃ……不安だったろうなマニ……」

 アラバギが 立ち上がり ラキを引っ立てた

「今夜!だ」

 あの 純真なアラバギですら すごした 夜なのに

 それすら なかったとなれば

  マニだって……不安すぎて いても立ってもいられないはず

「だからどうしたの?バギ」

 慌てて後を追う令に バギは

「男としてラキのバカは マニを 抱きしめてやれてないらしい」

「え……ちょっと!」

 愼が 先に車でまっていたが マニの隣に 座っていて

 ラキが 目を見開いた

「愼……そこは」

 令が 声を発した途端

「いいの!わたしがそうしてもらったの!」

 涙目の マニが 悲鳴を あげた

「ど……ど……どけよ」

 ラキは真っ赤になって

 苦情を言う

「や……!私が嫌なのよ!バカ」

気が強いはずのマニが 叫んだ

「もう……わたしが きらいならほっといて!」

松末が 肩を竦める

 そして盛大に ため息をついた

「まァ!いい!とりあえず乗ってくれ」

 令とラキが並び アラバギが 助手席だった

 アラバギは 薄荷飴を 松末に 渡した

「禁煙にいいかなと……」

 ふふ……松末は 笑う

「アラバギ……良い旦那だよアンタは!」

 ラキが目線を下げて

 ぐっと 両の手を握った

「あのさ……」

 振り返ってマニを見つめるとラキが言う

「だがらさ……マニ!あのね!おれね」

 子供のように視線で縋る

「す……好きだよ!でね俺!お金ないけど指輪あげたい!」

 言い切った!

 マニは 目をパチクリと 瞬くと 泣き笑いに なった!

それが あまりにもキュートで 華のようで 令が ほろりと 涙ぐむ

「言えたな!」

 アラバギが ラキの頭をパシリと 叩く

「だからさ……泣かないでよ」

 真っ赤っかな ラキくんは マニに手を伸ばした

 頬を 指でなでると

「マニはなんでも 綺麗だから……」

 もはや 日本語すら危ういが

 ラキはまくし立てた

「愼……ごめん」

 マニが 愼を みて 頭を下げる

「OK!よかったね」

 優しい笑顔の 愼が 車をおりた!

「行けよ!王子くん」

 松末に 鼓舞されて ラキは マニの隣に座る

「わたしも!ごめんねラキ」

 プーちゃんが ラキとマニの間を陣取ったが

 令に 抱き上げられた

「すき?」

 ラキが不安げにマニを覗き込む

「バカね大好きよ!」

 マニが姉さん女房全開で ラキの 頬をつまんでいる

「あのさ……いいかい?」

 松末が 伺う

「え?」

「車出してもいいかね!」

「はい!」

 ラキとマニの返事が揃う

マニは きゅぅっと ラキの腕に手を回した

 そして ラキに寄りかかる

 ラキは 真っ赤に なりながら みんなに詫びた

「騒いでごめん!俺」

「いい!」

 令が 笑った

良かったねマニさん!

 パッチンと ウインクすると プーちゃんの頭を撫でる

「マニ?」

 ラキが 呼ぶ

 なぁに?

 俺ねがんばるから!

 エンジンがかかってきた ラキである

 しあわせにする!!

 言い切って マニの髪に キスをした

「おーおー」

 松末が からかいたくなったのか

「ラキくんよ!唇にしてやれよ!」

 そう ひやかした

 ゆでダコ ラキ……マニのほっぺたに チューをした


 ステーションワゴンは 静かに高速出口に降りる

 そして翁の デパートに入るまで マニはラキに ベッタリだった

「はい……あーん」

 マニが ラキの口に 飴を入れてやると ぺったりと 頬を ラキの 腕につける

「ラキ!あのね!」

 令ですら声をかけるのを躊躇う程……

 2人はべったりだった

「おーいついたぞ!」

 松末に ミラー越しに 言われるまで 2人は 仲睦まじく

 声かけないで オーラ全開だったのだ

「着いたって」

 ラキは ニコニコしながらマニに 声をかけ

 開いたドアから マニをエスコートする

「あのな!」

「あてられっぱなしなんだけど!」

 愼ですら目を覆うくらい

ラキとマニは ベタベタだった

「ねー どんな指輪あるのかな?」

 マニが 最早 マニでは有り得ないほどでれでれで プーちゃんが 不思議そうに 小首を傾げている

「おまえらな!」

 松末が べりっと 引き剥がす

 とにかく!

 夜まで大人しくしてろ!

いって松末は 頭をかいた

 あー!

 それであっても

 べったりくっつくので 令は羨ましそうに眺めてしまう

 アラバギは それに気づいてか 令の 背を抱いた

「たいがいにしとけ!」

「あてんなよ!」

 松末と 愼が がっくりと うなだれた

「1階よねー令ちゃん?」

 チークで赤いのか それともデレすぎて赤いのか?

 マニは ラキの 腕にぶらさがっている

「そうでーす」

令も 上機嫌

 松末は 頭をかかえる

「これだから……」

 愼が ぽむぽむと 松末の 背を叩いた

「わかります……」

 もはや 涙目 男衆

 ペアになれない

 お二人さん

 愼の 腕には プーちゃんが ぶらさがっている

 きゃん!

 不満と プーちゃんが同意した

 一行は イベントホールを 横目に アジアン雑貨を 目指す

 プーちゃんは 同じ階に ペット用品と トリミングがあるので 同伴可能だった

 ちまちまと しっぽを振りながら 愼の腕に抱かれている

 カップル組は 着ぐるみさんが 配るチラシを 受け取りつつ イッチャイチャである

 はあ 男衆は ため息を ついた

 ひょっとして……この後ずっとこうか?

 流石の松末でも ボヤいた

 みたいですねー

 愼が プーちゃんの 頭をなでなで 苦笑する

 緊張感の 欠片もねーな!

 2人と1匹……孤独であった

 アジアン雑貨につくなり マニが 駆け込み ウィンドウにかじりつく

 そこには 羽の形からつくった ターコイズの はまった

 リングやら 太めの シルバーリングが 多数あった

「わあ!」

 女性組 目がハート

 男性組 お財布と睨めっこなのである

 「ねーラキ!」

 マニが店員さんに 飾りのない 銀の輪を取り出してもらっている

「私これがいいの!だからね!お揃いにしたい」

 縋る マニの目に ラキが頭をかいた

「だってさマニにはさ……こっちのが」

 ラキはターコイズの リングを みつめている

「あのね!今はね!夫婦でお揃いの指輪するんだって」

 耳まで真っ赤になって 力説している

 令が 微笑んで二人をみまもった

 アラバギは 蒲鉾型の シルバーリングに目をとめ

 令の手をひく

 サイズ

 たしか夫婦は 左手の薬指だ

 アラバギは さっき松末に耳打ちされていた

「奥様は13号ですね」

アジアンな洋服の 店員さん お香の 匂いを纏いながら

 しらべてくれる

「わ!奥様だって」

 マニが ラキの シャツをひいて 令の腕をバシバシと 叩いた

 祝福って痛いのね

 令が 泣き笑いした

 ペアなら お安く出来ます

 店員さんナイススマイル

 アラバギも お揃いのシルバーリングを 買って 令に そっとはめた

 そして指輪にそっと 口付ける…

 令は涙ぐむと アラバギの 指にもはめて そっと 口付けた

「おめでとうございます!ご新婚ですか?」

 満面の笑顔で祝福され 2人は

「はい」と……うなづいた

 でしたら 当店よりお祝いにアロマキャンドルを差しあげます

 店員さんが 綺麗な蓮の形のキャンドルをくれた

 運命の花「蓮」

 令は 胸に抱く

 ラキは 令の頭をポンとたたくと

「先越されて悔しいけどさ……バギと幸せにね」

 マニとラキも お揃いのリングをはめていた

「赤ちゃん出来たら報告にきてね!」

 マニが ウインクする

 令とアラバギは 4人に

 ぺこりと頭を下げた

 きゃわん

 プーちゃんもオイラも祝福すると 声高にないた


 END





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