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替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
ルカ
異世界恋愛ロマファン
2025年08月03日
公開日
8.6万字
連載中
ごく平凡な毎日を過ごしていた紗季… それが、何の前触れもなく見知らぬ場所へ飛ばされて… そこで紗季は、今まで考えたこともなかったような自分の『運命』に翻弄される… ※表紙画は、ck2様に描いていただきました。

良いことと悪いこと

第1話

「……様、ご機嫌麗しゅうございます。」


「……様、今日はとても良いお天気でございますね。」




生地は肌に吸い付くような感触で、歩く度にドレスの長い裾が床を擦る音がする。

マーブル模様の床は冷たい石で作られ、綺麗に磨き上げられている。

長い廊下の真ん中には、ふかふかした緋色の絨毯。

見上げると、そこには美しい女神や天使の天井画が広がる。




「……会いたかったわ…とても……」


白い、か細い指…

腕には青い宝石の付いたバングルが輝いている。

その手が私に向かって差し伸べられて…

私は、なぜだかその手を握り締めることを躊躇する。







「はっ!」




目が覚めて、今見ていたのが夢だとわかって安堵する。

でも、まだ鼓動は全速力で駆けた時みたいに速い。




特に怖い夢というわけではないのだけれど、何かものすごく心がざわざわした。

多分、このところ、同じような夢を何度も見たせいだ。

何度も見るってことは、何か意味があるんじゃないかって気になってしまう。




でも、それが何なのかは全くわからない。

それと、夢の中で言われてる言葉が、どうしても聞き取ることが出来ない。

きっと、それは私の名前だ。

でも、『紗季』とは言ってないように思える。

もちろん、『内山』でもない。




(ま、いっか……)




考えてもわからないことは、考えるだけ無駄というものだ。

鼓動も落ち着き、私はベッドから起き出した。

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