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第15話

大人になってからおんぶされることなんて初めてだ。

しかも、相手は知らない人。

顔さえ、まだはっきりとは見ていない。




進んで行くうちに、私がいたのは森のようなところだとわかった。

うちの近くに公園はあるけど、こんなに木の生い茂ったところじゃない。

やっぱりここは、なにかおかしなところなんだって想いが強くなって来た。




「あの…大丈夫ですか?

私、重いですよね?」


「こんなの全然たいしたことない。」


強がりなのか何なのかわからないけど、彼は素っ気なくそう言った。

でも、とりあえず、この人は善人だと思う。

困ってた私を助けてくれたんだもの。




いや…そうとも言い切れないか。

彼は家に連れて行くとは言ったけど、それが本当かどうかなんて、まだわからない。

それに、そこで何が起きるかもわからないんだから。




なんせ私はまだ動くことさえままならない体…

彼が、良い人であることを祈るしか、今の私には出来ない。




彼は暗闇の中、話もせずにただ黙々と歩いた。

やがて森を抜け……しばらく進むと、月明りに照らされた小さな家が見えて来た。

多分、彼の家はそこではないかと私は直感した。


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