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第163話

それからも、私は少しずつ回復して行く振りをした。

それはあまり早くでは不自然だし、かといって、それほど時間をかけることも出来ない。

結婚が決まっているのだから。




お城に戻って来て、十日が経った頃…

私は、サンドラさんやレベッカさんに支えられながら、ほんの数歩、歩いて見せた。

それをご覧になった時の陛下は…人目もはばからず、涙を流して喜ばれた。

こんなに良い人に、騙すような真似をして…私の心は酷く痛んだけれど、これはやらなくてはいけないこと。




(陛下…申し訳ありません。)




心の中で頭を下げながら、私はシャルア王女を演じ続けた。




王妃様も何かを言って来られることはなかった。

やはり、サンドラさんの推測通りだったようだ。

私が歩く様子を見て、王妃様は喜ばれていたけれど、その目は陛下のものとは違い、とても冷ややかなものだった。

毒を盛ったのが王妃様だという推測が、本当のことのように思えた。

それとも、そんな先入観があるから、王妃様を悪いイメージで見てしまうのか…

それはまだわからないことだけど、とにかく気を許してはいけない。




(慎重に…慎重に…)




私は自分に言い聞かせた。

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