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第14話

 紅蓮は普段通り挨拶をし、すぐに本題へと話をつづけた。


「単刀直入に話すなら、どちらも事実です。作家の神崎紅は小説を書いてる時のペンネームです。そして、同性愛者でもあります。自分の作品の一つにある俺様副会長と不器用な僕も、自分の自己満足にしか過ぎません。だから、副会長である神崎冬夜の苦情は一切認めません。冬夜は自分とは何の関係もありません。中学からの親友で、自分は彼のことが好きですが、彼は自分を友人と思っている。その真実がある以上、これ以上の批判はやめてください。同性愛である自分を気持ち悪いと思うのならば、生徒会長からおろしてもらっても構いません」


 (紅蓮が……俺のことを好き?)


 俺は今、夢を見ているんだと思った。


 紅蓮の好きな相手が俺。そして、俺は紅蓮のことが好き。つまり両想いだったということ。


 だけど、好きな奴がいるのかと答えた時になんで俺の名前を出さなかったんだ?


 その時、昨晩、紅蓮が俺に「返信不要」という題名で送られてきたメールを思い出していた。


 “冬夜、僕は冬夜のことが好き。

 だから、僕を憧れとして見ないでほしい”


 そのメールの本文にはこう書かれていた。ただ、返信不要ということもありメールを返信することはなかったが紅蓮のメールの内容がイマイチ理解出来ないのもあった。


 「好き」というのも親友として「好き」だとばかり思っていた。しかし、「憧れとして見ないでほしい」という意味はわからなかった。


 俺は一度でも、紅蓮、お前のことを憧れていると言ったか?


 ……神崎紅。その名前が頭によぎった時、紅蓮が言っていたことがわかった。


 だけど、なんで、そんなことをわざわざメールで知らせるんだ? などと思っていたが、全校集会で俺のことが好きという発言でようやく一つの答えにたどりつくことが出来た。


 ようするに神崎紅自身としてではなく、如月紅蓮として自分の全てを見てほしいということなんだな。


「お前のメールはわかりにくいんだよ……紅蓮」


 だったら俺も伝えてやる。さんざん、お前のことを好きだったという気持ちを、この全校集会で……俺は体育館の入り口の扉を開けて、紅蓮が話しているのを遮ってまで、こういった。


「待てよ、紅蓮」


「……冬夜」


 なんだよ、その顔は。驚いたか? お前が学校を休んでほしいと言ったのに、なんで俺がこんな場所にいるって顔だな。


 だけど、今からもっとお前が驚くような発言をしてやる。だから、一言一句聞き逃さず俺の話を聞け。


「よう、全校生徒のみんな。副会長である神崎冬夜だ。いつもは会長である紅蓮に挨拶は任せてるから、こうやって皆の前で話すのは初めてになる。初めての挨拶がまさか紅蓮の弁解だとは思わなかったけどな。みんな、ちゃんと聞いてくれ。

俺も会長である如月紅蓮のことが好きだ。これは、友人としての好きじゃない。会長と同じ俺も皆が嫌いな同性愛者ってわけだ。会長副会長揃って、同性愛者だとお前らは引くか? 俺は引いてもらっても一向に構わない。ただ、一つ言わせてもらうならば俺は同性愛者だから近くにいる紅蓮に惹かれたんじゃねえ。俺のサポートをしてくれて、でも、時々、俺のために怒ってくれる。そして、一人だとすぐに落ち込んでは女みたいに泣く。そんな如月紅蓮だから好きになったんだ。守ってやりたいとも思った。俺は会長としての紅蓮が好きなんかじゃない。如月紅蓮、一人として好きなんだ。 

最初は神崎紅のファンだったから、親友である紅蓮にも神崎紅を知ってほしかった。でも、神崎紅の名前を出すと、紅蓮は嫌な顔をしたから、俺はてっきり神崎紅が嫌いなんだと思ってた。だけど、神崎紅が自分であることを話したくなかったからこそ、俺にバレないように今まで隠し続けていたなんてな。神崎紅だと知ったら、俺が紅蓮を憧れの人としてしか見なくなる。それが嫌だから黙っていたらしい。な、紅蓮って可愛い奴だろ? それに紅蓮が会長になって、学校が以前より良くなったと思わないか? といっても、好きな奴を庇う副会長って言う目でしか見れないか? 俺は紅蓮が好きで、紅蓮も俺が好き。これが事実だ。他に言うことはない。……俺達のことが気持ち悪いか? そう思うなら勝手に思えばいい。会長副会長を一気に生徒会から、おろすか? そうしたいだったら好きにしろ。俺は紅蓮が好きだから、何をされようとも構わない。以上だ。……紅蓮、行くぞ」


「冬夜……」


 俺は紅蓮の手を強く握り、その場から紅蓮と一緒に立ち去った。

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