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最終話

 それから一ヶ月後が経ち、全校集会の話題は神崎紅の時よりも学校中の話題になっていた。だが、俺は全校集会で紅蓮に告白したことを後悔していない。


 むしろ全校生徒に紅蓮が好きということを伝えられて、俺はそれだけで満足だ。


 全校集会が終わってから、紅蓮を生徒会長をおろせという苦情はほとんどなくなり、そのお陰で俺と紅蓮は星ヶ丘高校の生徒会長と副会長として生徒会業務をこなしていた。


 一部では同性同士の恋愛なんて理解出来ないという批判もあったが、その一部で交際禁止の学校で退学を恐れず、全校集会で自分の素直な気持ちを言えるなんて感動したという意見もあった。


 そんな噂が経って、気がつくと高校卒業式当日になった。


 あとから知った事実だが、紅蓮が全校集会を開く前に、前々から先生方に交渉していた「恋愛の自由化」が許可されたという。中学の頃から紅蓮が実現させたかった夢が叶ったというわけだ。


 今まで生徒が言っても、覆されることのない校則を紅蓮は変えてみせたのだ。


 俺が見ていないところで、アイツは相当の努力をしていたのだろう。

 ただ、恋愛の自由化の事実は俺達の学年しか知らないという。その事実を知ってか、紅蓮を見る目が変わったとか。


 俺は教室で紅蓮に「卒業式が終わったあと、生徒会室に来てほしい」と言われていたので、卒業式が終わった後、生徒会室に向かった。


 卒業式にまで、生徒会室に来いなんて何の用なんだ? 俺は生徒会室の扉を開けた。そこには紅蓮の姿があった。


* * *


「遅い、冬夜」


「悪かったって。お前が来るのが早いんだよ。卒業式なんだから、俺以外の奴とも話したらどうだ? お前はこの学校の生徒会長なんだから」


「大丈夫、挨拶なら済ませた。今日は冬夜に伝えたいことがあって生徒会室に呼んだ」


「伝えたいこと?」


「冬夜、改めて告白する。僕は冬夜のことが好き。だから僕と付き合ってほしい。駄目、かな?」


 紅蓮の頬は今まで以上に蒸気していた。

 耳まで真っ赤で、俺に告白するのが相当恥ずかしかったんだろうというのが手に取るようにわかった。


 俺の答えはもう既に決まっていた。


「俺が嫌だ……なんて言うと思ってるのか? 俺は紅蓮のことを中一の頃から好きだったんだぜ?」


 俺は何の躊躇いもなく、そう答えた。


「っ……」


「なんで泣いてんだよ、紅蓮」


「だって、冬夜が僕のことを好きだって言ってくれたから。今まで冷たい態度を取ってごめん」


「紅蓮、お前……」


 なんて愛しいんだろう。それと同時に次は恋人として、コイツを守りたいとも思った。


 俺に好きだと言われ、嬉しくて泣いてしまう紅蓮が可愛いと感じた俺は言葉を言い終わる前に紅蓮を抱きしめていた。


「冬夜」


「お前は可愛いな、紅蓮。でも、せっかく結ばれた日なんだから笑ってくれよ、な?」


「冬……んっ……」


 紅蓮の両頬を両手で包み込むようにしながら、俺は紅蓮にキスをした。唇を離したあと、さっきまで泣いていた紅蓮の頬がまた赤くなっていた。


「今度からは遠慮なくキスするからな。好きだぜ、紅蓮」


「ありがとう、冬夜。……僕だって、冬夜のことが好き」


 普段はしっかりしてるが、俺の前ではちょっぴり泣き虫な紅蓮。いつも紅蓮に迷惑をかけている問題児の俺。


 これから先、どんなことが待ち受けているんだろう? それは、付き合ったばかりの俺たちにもまだわからない。


 俺と紅蓮はその日、ただ一つの愛を誓った。


~fin~

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