【極秘報告書:第20記録】
件名:最終事案記録『ゆらゆら様の消滅と再顕について』
分類:国家災害・神格災厄・事象X-04-YY
報告者:記録なし(A-クラス権限限定)
【概要】
本報告書は、津山地区旧施設地下にて発生した「ゆらゆら様(対象M)」終末事案の記録である。
本記録は非公式な経路にて編纂されており、正式な政府記録には含まれていない。
ただし、現場に居合わせた一名の記録者(名は削除)が極秘に持ち帰った音声と映像記録をもとに構成された内容である。
なお、本記録はすでに削除対象に指定されており、一定期間後、自動的に破棄される予定である。
【現象報告抜粋】
対象Mの完全神格化と、対災害部隊による鎮圧作戦の記録は断片的である。
「祓詞(はらえことば)」に似た旋律を歌唱する女性(佐原みき)と、対象Mとの間に何らかの共鳴現象が生じたことが確認されている。
歌詞には以下のような文言が含まれていたと報告されている:
「われはゆらぎ そらにかえる」
「ゆらゆら ゆらり おやすみなさい」
対象Mの構成情報(神経系・記録知識・過去の記憶情報)は、これを最後に観測不可領域へと転移した。
【後日談:世界の反応】
ゆらゆら様に関する全情報(ネット投稿、映像記録、被験者の記憶)は現在、大規模な欠損を確認している。
国際的には、「災害対処演習」または「土木事故」として処理されているが、関係者の精神障害の報告件数が急増している。
また、“存在しない神”の夢を見たという通報が日本国外にも散見され、これが何らかの残留記憶の波及である可能性が議論されている。
【映像断片:最終目撃者の証言】
「……彼女は、歌い終わったあと、笑っていました。優しい笑み……いや、あれは……どこか、別のものが乗っていたような……。風が吹いて、彼女の髪が、……ゆらゆらと……」
【補足資料A:歌詞の一部解析】
祓いに用いられた歌詞は古神道的な「鎮魂詞」の変形であり、同時に記録者の精神構造そのものを揺らがせる特性がある。
歌唱直後に全記録媒体にノイズと欠損が発生しており、「世界の再構成」あるいは「存在の剪定(せんてい)」が行われた可能性が否定できない。
【備考:本記録者の所感】
……正直に言えば、私は、すべてが終わったとは思っていない。
人々の記憶から神が消えた、というのならば、それ自体が最も恐ろしい祟りなのではないか。
“記録されないものは、存在しない”
だが、私は――見たのだ。
“彼女”が最後に浮かべた、あの笑みを。
あの時、確かに――揺れていた。
音もなく、光もなく、ただ、ゆらゆらと。
【本記録は自動消去処理が予定されています。閲覧後、脳内への記録定着が疑われる場合は、記憶抹消処置を受けてください。】
【神格災厄X-04-YYに関する口外・二次記録は禁止されており、違反時は祓清局が対応にあたります。】
了