私は弱い人間だ。
私は人に自分の弱みを見せるのが苦手で何かあると思わず嘘が口から零れる。
私はそんな自分が大っ嫌いだったがとある縁からそんな私を受け入れてくれる男性と出会えた。
ーーーが、しかしだからと言って何かやらかしたらすぐ素直になれる訳ではない。
キッチンで食器棚を横転させ、中に入っていた陶器類が全滅。
どうしようとあたふたしている前に彼が帰ってきてしまった。
私は玄関まで彼を迎えに行くとそのままハグする。
「おかえりなさい、貴方」
このまま一度寝室で着替えてもらって今日は外食に出かけよう。
そして彼にお使いを頼んで帰ってくる間に棚を―――「なんか隠してる?」
一瞬でバレた。
「そんなw---」
彼の方を向くと彼は悲しみ半分呆れ半分の複雑な表情で私の頭を撫でてきた。
この素直になれない癖を治そう。彼はそう言って私を許してくれたじゃないか…。
大借金しても笑ってあげると、家を燃やそうが他の人に頭を下げてあげると言ってくれてじゃないか…。
意を決して私は言う。
「ごめん…。食器棚を倒しちゃって食器が全部ダメになっちゃったの」
「おぉ、これはすごい失敗をしたね。
勇気を出してくれてありがとう」
恐ろしいほど甘い評価で私を認めてくれた彼に自分自身が悔しくなる。
流れそうになる涙を堪え抱き締めていた彼から離れようとした瞬間、不意に彼に手を掴まれた。
「何をしているんだ!」
つんざくような悲鳴。
急な変容に頭が理解するより先にトラウマが蘇って体がすくみ上る。
「手を怪我しているじゃないか!!」
「ごめんなさいッーーー。
…え?」
言われて手を見てみたら右手の指に刺さったガラス片と流れる血。
「指をそのまま頭の上に上げて。
今救急セット取ってくるから」
そう言った彼は頭上に上げた手の代わりに私の腰に手を回してリビングまで移動させる。
ミスを許した上で私が危険な事をしたことに怒ってくれた。
その事実に頭から湯気が出そうな程嬉しくなり失敗の事など頭から消え去ったのは言うまでもない。