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恋するTS魔法少女は余命半年〜先に異世界転移した先輩に想いを告げるまで命の炎を燃やす〜
恋するTS魔法少女は余命半年〜先に異世界転移した先輩に想いを告げるまで命の炎を燃やす〜
篠宮継宣|しのみやつぐのぶ
異世界ファンタジー冒険・バトル
2025年08月10日
公開日
5.8万字
連載中
余命半年!恋する元男子の魔法少女は、先輩に想いを伝えられるか!?  元高1男子と元高3女子。転移召喚先異世界での冒険の旅。高校に入学し夏休み直前、いきなり医者に余命半年と宣告された男子高校生シノヤマは、同じ天文同好会の三年の先輩モリクボに淡い恋心を抱いている。  ある満月の夜、流星群を観測しようと学校の屋上で星を眺めていたら、先輩がいきなりまばゆい光に包まれて消えてしまった。  後に判明することになるが、転移魔法で異世界に召喚されてしまったらしい。召喚時に女子から男子になって。  その次の日、僕も同じように光に包まれて日本から姿を消す。僕も転移時に男子から女子になってしまった。  この物語は、余命宣告された高校一年の男子が、異世界に転移させられて魔法使いになるも、「この容姿なら魔法使いより魔法少女よね」という理由から、異世界で「魔法少女」と名乗り、冒険者になる。  また先に転移したはずの先輩を探して旅に出ることになるのだが。  余命半年。異世界に転移してもどうやらそのリミットは残っているらしい。

プロローグ(前編)

   ◯ 余命を知る


 夏休み直前、余命半年だと告げられた。


まだ高校に入学して四ヶ月だというのに、もう人生の終わりの時期が確定してしまった。


理不尽だ。


これからまだまだやりたいことが山程あったというのに。


 ただ幸いな事に、その時が来るまでは比較的身体も動くし、意識もたもっていられるとか。


 なので、その時が来るまでは、誰にも明かさず普通に高校生活を送ることにした。



「シノヤマ君、ちょっとこっち手伝って!」


 天文同好会の三年のモリクボ先輩だ。つやつや黒髪ロングで眼鏡が光る、みんなの憧れの先輩。


「はーい、今そっちに行きまぁぁす」



 ——今夜、星が降ってくるらしいよ



 昼休み、先輩が突然そう僕に告げると「よし! 今宵は二人で天体観測をしよう!」と言い出し、特に予定もあるわけでもないので快諾した。


というより願ったり叶ったり。


 今、僕たちは天体観測をする為にその準備をしている。


 僕たち⋯⋯そう、天文同好会は先輩と僕の二人だけしかメンバーがいない。でもそれがいい。


 僕は、先輩のことが好きで好きで堪らない。周りからは犬呼ばわりされるくらい、呼ばれると即応して駆けつける。ワンワン!


 でもそんな想いは先輩には告白していない。


歳の差もあるが、どうみても釣り合わない。


先輩は身長一六七センチ、女子にしては高身長だろう。


僕はといえば、一六〇センチ、ジャスト! 先輩よりも小さいのだ。


 加えて、痩せ型で髪の毛も細くてサラサラしているし、色白。


制服で詰め襟を着ているときは良いが、私服だと駅前とかでナンパをされるくらいの女の子っぽい風格。


 知らない人が見たら、「あら〜」なんて言われるような百合百合コンビに見えることだろう。


僕としては不本意ではあるが、あまり悪い気はしてないのだけれどね。



   ◯ 月夜の晩に



 午後七時、学校の屋上で、天体観測の準備を進めていた。


今夜は満月。


そして、多少の曇り空。


天体観測には不向きな条件だが、流星が一番多くみられるタイミングなのだそうで、かまわず決行した。


「反射望遠鏡、ヨシ!」「デジカメ、ヨシ!」


 先輩が、指差し呼称で確認をしている。


「あっ、あと椅子もですね、ハイ」

「うん、さすがシノヤマ君だね。それとぉ、あとはこれね」


 コンビニ袋に一杯のお菓子とジュース。うーん、先輩は甘いものに目がないからなあ。


「ちょっといくらなんでも多すぎでは……」


「なーに言ってんのよ、これくらいなきゃあね。ボリボリボリ」


「あーっ、もう食ってる」


   ◯ 消えていく


 真っ白に光る満月を見ながら僕は、ぼそりと呟いた。


「先輩……月がとっても綺麗ですね」

「ちょっ、シノヤマ君ってば突然何をいいだすの?」


「え? 何って月ですよ。まんまるお月さま。きれいな満月だなぁって」

「あ、そ、そう? そうなの。なんだ……びっくりするじゃない」


 なんだか急に先輩が顔を赤らめて照れている。女の子はよくわからないなあ。


「あっ、見て! 流れ星が見えた!」

「あ、ホントだ」

「流星群の観測開始よ!」


 先輩が反射望遠鏡のファインダーに目をあてて夢中になってピントを動かしていた。



 ——その時



 先輩と望遠鏡が眩しい光に包まれた。


なにかに照らされているというよりは先輩そのものが光っているように見えた。


「えっ、なにこれ? あたし……光ってる?」

「先輩! なんですかこれ? なんなんですか?」


「シノヤマ君!」


 先輩が、不安そうな眼差しで僕の名前を叫んだ。


 すると光はますます強さを増し、視界が全て真っ白になってしまったかのように錯覚した。



 ——シャキィーン



 甲高い音と共に、反射望遠鏡と先輩は、光の粒をいくつか残して消えてしまった。


僕はなにが起こったのかまったく理解出来ずにその場にしばらくたちつくしていた。


 目の前には先輩が用意したお菓子の袋と食べかけのチョコレートが落ちているだけだった。



   ◯ 消失



 次の日、学校に行ったが、三年の先輩のクラスに顔を出しても、「誰それ?」といった顔で、誰も先輩のことを覚えていない。


というより最初からいなかった扱い? 知っているのは僕だけ。


 昼休み、先輩のクラスの担任に聞いてみても、知らないという。


そもそも出席簿にも名前がないという。


 どうなっているんだ……。



   ◯ 僕の番



 その日の放課後、先輩が消えたあの屋上に来てみた。


 やはり何も無い。


もともと何も起きてなかったんじゃないか? あれは全て僕の妄想で、先輩との出会いも、何もかも存在していなかったのではないだろうか。


 そもそも僕は医者に余命宣告をされて残り少ない命……。


これ、もしかしてずっと病院のベッドの上で見ている夢なんじゃないだろうか。


 夕方まで、ずっと屋上に座り込んでぼーっとしていた。


 そろそろ日が暮れる、もう帰ろうか、と思ったその時——


 今度は僕が光につつまれた。


自分が光源だと案外眩しくないものだ。


それに昨晩、先輩が光っているのを見ているので何故か冷静に今の自分の状況を観察している。


 手のひらを上にし、まじまじと見る。


光ってるな。

足も……光ってる。


そもそも詰め襟の制服まで光っている。


なんだこれは。


などと短い時間の中で色々な思考が巡った。



 ——シャキィーン



          —— 後編へ つづく

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