「平成26年10月10日,俺は東京の刑務所を出所した。高村広和46歳,覚醒剤使用でションベン刑を務め高い塀の外に出た。お迎えは,後輩の一明が仕事を休んで軽バスで来てくれた。「オゥ!一明忙しい中悪いな,」すると一明は「出所おめでとうございます。アンパンと牛乳買ってきましたよ。それと明治神宮は,ナビにセットしてあります。」と久しぶりに会う一明は笑顔で元気そうだった。一明は俺の一つ下の後輩で、ゴリラみたいな奴で酒を呑むと人格が変わり楽しい酒を呑み場の雰囲気を盛り上げてくれる男だ。「一明、出所したらアンパンと牛乳の組み合わせが美味いから食べたかったんだよ。ありがとうな。」一明はゴリラ顔で「いえいえ、その位は,しますよ。」と、しかめっ面で運転していた。帰り道に明治神宮の清正の井戸に行き金を洗ってから地元に帰った。刑務所の中でテレビを観ていたら明治神宮の清正の井戸が、パワースポットだと言っていたので行ってみたかったので、一明に手紙を書いていたのだ。「オイ一明、手紙に書いたけど寝泊まりする所が、無いからな2日間お世話になるぞ」「ハイ!たいした事は出来ないけどオレの布団で寝て下さい!風呂も沸かしてるから、ゆっくり入って下さい。」一明ありがとうな!と心の中でお礼をした。そして2日間は一明と色んな話をして、ゆっくりと風呂に入り一明のベットでゆっくりと寝た。それからの俺はムショボケ拘禁病に悩まされ社会に慣れずダラダラとその日暮らしの日々が1ヶ月程続いた。俺は仲間に恵まれていて、中学の同級生の仲間達に,美味い物をご馳走になり、酒も楽しく頂いた。ヨシオは,ギャンブルが好きで相変わらずパチンコ三昧ヨシオの親には,ガキの頃よく迷惑をかけた。気を使わない良い男でパチンコに勝つと奢ってくれる。浅野のコーちゃんは人をイジるのが、好きで自分がイジられるのは苦手という酒の席には、欠かせない,面白い男だ。俺の一つ上の先輩のトオルさんとは、仲がよく気が合ったので、久しぶりにトオルさんの家に訪ねてみると、トオルさんは顔が歪み喉の辺りに傷があり「先輩どうしたんですかあ?」と聞いた。トオルさんは歪んだ顔で,喋りづらそうに「顔が麻痺してきて、おかしいなと思い病院に行ってみたら癌になっていて、手術をしたけど完治せず放射線治療をして、なんとかごまかしごまかし生活してるって感じだよ」と言われた。俺はトオルさんの家に何日か泊めてもらおうかなと考えてたんだけど、事情を知って帰ろうとした。「久しぶりに会ったんだから俺ん家に泊まっていけよ。どうせ行くアテ無いんだろ。オレも暇だしな。」その言葉に甘えさせてもらい3日間お世話になった。その3日間は,色んな話をした。死が近づいている人の命についての話や人生についての話,昔話二人で濃い話をした。トオルさんの家のホットプレートで食べた輪切りの玉ねぎの美味かった事が今でも忘れられない。トオルさんありがとうな!出所して1ヶ月程経った頃いつまでもブラブラしてないで部屋を探そうとやっとムショボケがとれて来た頃だった。その時,中学の同級生の秀之と連絡をとった。秀之と俺は中学時代にサッカー部に入っていて中学の3年間一緒にサッカーを励んだ仲だ。秀之は頭の、つむじが七つありデンデンというアダ名があり秀之は俺の事をアダ名でジャジャと呼んでいた。ジャジャというアダ名は小学二年生位の時に理由はわからないが付いたアダ名だ。秀之は高校卒業後にブラジルに行ってサッカーをするぐらいサッカーが好きな男で今は不動産会社の社長をしている。「ジャジャ大変だろうから、これ使ってよ」と白い封筒をくれた。その封筒の中には10万円の大金が入っていた。「秀之ありがとうな。助かるよ。」秀之は社長になっても昔と変わらずジャジャ,ジャジャといつも優しく,心配してくれる。秀之!本当ありがとうな。その後の俺は,ワンルームの部屋を見つけて、少しホッとした安心感があった。布団一式と小さなテレビ,中古のガスレンジ中古の冷蔵庫それだけだったけど、寝る場所ができて俺は,嬉しくて満足だった。この時の俺は未来の事など深く考えて無くて、貧乏でもシャバを静かに楽しんでいた!