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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハカタ
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味噌村幸太郎
文芸・その他雑文・エッセイ
2025年08月12日
公開日
5,694字
連載中
キャッチコピー 「社会復帰、やらないか!?」 時は202X年……世は例のウイルスがまん延し、人々は新しい生活を余儀なくされた。 職を失い、心を病み、様々な家庭を絶望へと引きずり込んでいく……。 だが、そんな暗黒時代に一筋の光を当てる存在が、博多のどっかに誕生した。 これは一人の中年男性が経験した。 とても奇妙な体験談である。

第1話 凸電、テクニック!


 2020年、最悪の年が始まった。

 例のウイルスがまん延して、元々引きこもりだった僕は、外出不安が更に強くなり、家でずっと寝込んでいた。

 別件で、家庭の問題があり、特に親父との確執から、メンタルはボロボロ。

 過呼吸と激しい胸の痛みで、半年間は死に体として、生きていた。


 そんな中、僕が慕っているメンクリの先生と相談している中で、一つの提案が出た。

「B型の作業所に行ってみないか?」

 だいぶ状態も良くなっていたので、僕は「はい!」とやる気が出た。


 インターネットで、B型作業所を検索していると、とあるホームページが引っかかった。


『君の作品をスキルアップしながら、収入にしよう!』


 なんてキャッチフレーズだったと思う。


 見れば、某オタク文化に特化した専門学校に似ている。

『アニメ・マンガ・声優・ユーチューバー・動画制作・イラスト・歌・コスプレ・プロゲーマー』


(こんなのがあるのかぁ……)


 特に一番気になったのは、最後の項目だ。

『小説・ライトノベル』


(うおおお! タダで通所できて、尚且つ、小説を習えるのか!?)


 テンションが爆上がりした僕は、すぐに電話して予約する。

 どうやら、この秋に博多のどっかで作業所を開所するとのこと。

 社交不安障害がある僕は、ビクビクしながら、

「と、とりあえず、見学だけさせてください……」

 そう言って、予約するのであった。


 数日後、博多のスタッフから電話があった。

「ガハハハッ! 味噌村さんですか?」

 開口一番、ゲラゲラ笑うおじさんが出て、僕は少し怖かった。

「は、はい……」

「見学希望らしいですね。いつがいいですか、ガハハハッ!」

(なんでこの人、こんなに笑ってんだろ……)

「はい、じゃあ最短ならいつごろ空いてます?」

「ガハハハッ! 最短ですかぁ? ガハハハッ!」

(なにが可笑しいんだ?)

「じゃあ、9月26日でどうですか、ガハハハッ!」

「は、はい。それでいいです……」

「狭いところですけど、見てやってくださいよぉ! ガハハハッ!」

 終始、爆笑した人が新作業所の所長らしく、名前は天拝山てんぱいざん 輝照てるてるさんだ。


「うーん、なんか変わった作業所だなぁ……」


 とりあえず、見学を決めた無職の38歳だった。

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