「でも、リアルは捨てたって……」
「あれはお前が乙女なんちゃらのミカなんとか? を好きだって言うから。それなら諦めるしかねぇかなって」
「え?」
中学時代のことね。私の黒歴史のせいで、黒炎君は私のことを好きじゃなくなったってこと?
「私、ゲームキャラとしか思ってなかったよ?」
「は?」
こちらもまたビックリ。お互いにゲームキャラを本気で愛していると勘違いをしていたらしい。
「私は中学時代からずっと黒炎君が好きだったよ。確かにゲームキャラにもハマってたけど、それはそれっていうか。それにゲームキャラだと触れられないし」
「それは俺も同じこと考えてた。……朱里のこと好きだ。あのゲームだって朱里と同じ名前のキャラがいるから購入しただけで」
「待って、そのわりにゲームキャラのアカリアカリ言ってたじゃん」
「ずっとしてたら愛着沸くだろ?」
「もうっ……ふふっ」
「ははっ」
黒炎君の言葉が理解出来てしまう私はつい笑みがこぼれてしまう。
「改めてお前に告白するぞ。俺、柊黒炎は霧姫朱里のことが世界で一番好きだ」
「私も黒炎君を世界で一番愛しています」
「っ……」
「うっ」
面と向かって告白をしたせいか、恥ずかしくてまとも目を合わせられない私たち。
でも、これで晴れて両思い。
「昼休みも終わるし、そろそろ教室に戻るぞ、朱里」
「う、うん!」
手を差し伸べてくれたので握り返す私。
それは恋人になって、はじめて手を繋いだ日。
◇ ◇ ◇
とある日曜日。あれから、黒炎君と交際して三ヶ月が経った。
いまだに黒炎君はゲームのアカリちゃんのほうも好きだけど、私のこともしっかり見てくれる。
黒炎君にとってアカリちゃんが大切な存在っていうのは知ってるから、無理矢理引き剥がしたりなんかしない。だから、アカリちゃんは私の恋のライバルでもある。
私とのデートは欠かさず毎週行ってくれるし、好きなものも自分のゲームを我慢してまで買ってくれたりする。
今日は久しぶりのお家デート。
「よし! 今日もアカリを攻略するか」
「ちょっ、まだこのゲームやるの?」
「当然だろ? まだハッピーエンドにはたどり着いてないんだから」
「むぅ……」
付き合ったっていうのに黒炎のアカリちゃん好きは変わらない。
「どうせこれクソゲーだよ。だって、ヤンデレルートにいったのこれで何百回目?」
「クソゲーって言うな! 今日こそはアカリと幸せに……」
「ねぇ、黒炎君」
「ん? どうし、んっ……!?」
「今日は私を攻略してみない?」
「そ、それも悪くないかもな」
キスで口を塞ぐとすぐにメロメロになる黒炎君。
それは私のことを好きだから恥ずかしがってるんだよね? まだまだわからないことだらけだけど、これだけはわかる。
黒炎君が私のことが好きってこと。だったら、私もその愛に全力で応えるよ。
これからも黒炎君に私をもっともっと見てもらえるように頑張る。
私は私らしく。この言葉をいつも忘れないようにして。
end