風邪をひいたことがなくてもすごいことだが、怪我をしないのはそれを超えてしまっている。
もはや彼女のことは聖女という生命体としてみるべきなのかもしれない。
「まあ、私の体が愛らしさも含めて完成されていることに関しては今更なんで、別にいいんですよ。問題はこいつが爆発したことです!」
「あっ、うん、そうだよね、ごめんね? でも、そんなこと起きるはずないんだけどなぁ……」
しかし、現実として聖女は爆破されているのである。
再発防止の為にも検査したいところではあるんだけど、しかし、ヒロタくんは今や無残な姿になっており、とても原因を特定できそうにない。
このまま迷宮入りだと今後の魔法開発にも困ってしまう。
う~~~ん、どうにかできないだろうか。
「魔女さん、魔女さん、私の力、お忘れじゃないですか?」
四散したヒロタくんの遺体を吟味しながら唸っていると、ノワがちょんちょんと袖を引っ張ってくる。
彼女の力って……。ああ! そういえばそうだ!
「そうか、癒しの力があるんだった」
「なんで忘れちゃってるんですか! 私の奇跡の主食の部分ですよ!? これが一番の売りなんですから!」
「いや、なんか、無敵な方に目が行っちゃって」
「そっちは前菜ですね」
「前菜にしては重いし豪華すぎる……」
この『ドラゴンに落とされてこの家を破壊しながら無傷でやってきた』というエピソードが強すぎて完全にそちらに意識をもっていかれていたが、そういえば彼女は万物を治すことが出来るんだった。
とんでもないチート能力なのだけど、この聖女様は他にもおかしな部分が多すぎて、なんだか印象が散ってしまっている。
今度、しっかりとノワに関する研究レポートをまとめないと。
「ちなみにすでに修復されています」
「わっ!? あ、相変わらず速い」
彼女の宣言通り、気付けば私の手の中には元通りの姿となったヒロタくんが誇り高いピカピカな姿で鎮座していた。
新品同然の外観である。これ、前より綺麗になっているな……。
聖女の力には『浄化』も含まれているはずなので、それが影響しているのかもしれない。
「ピー、疲労度65、少々心配です」
「あっ、ちゃんと動いてる……けど、治癒の力がかけられた後だから、これだと壊れた箇所が直って正常に戻った可能性があって、原因が分からないじゃん」
「ああ! そういえばそうですか! すいません、最強すぎて」
能力が強すぎても問題なことはあるらしい。
うーん、このまま爆発した理由が不明のままだと、不安が残り続けるなぁ……。
何故か正常に動いてしまうものほど、怖いものはないんだよね。
「でも直ったんならよかったじゃないですか! どれどれ、ヒロタくん、私の疲労度はどんなもんでぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
呑気なことを言いながら再度、ヒロタくんに手を伸ばしたノワだったが、その瞬間、これもまた同じようにヒロタくんがドカーン!と爆発していた。
悲鳴を上げながら尻もちをつくノワだが、ご安心ください。無傷です。
「ああよかった。爆発の原因はそのままだったみたいだね」
「何一つよくありませんが!? 一日に二爆発はヤバイですって! 心臓が飛び出ちゃいますよ!」
「飛び出た心臓を治癒すればいいよ」
「雑! 聖女の扱いが雑すぎます!」
胸を押さえているノワはさておき、、私が再度、ヒロタくんの遺骸を集めると、彼女はひょいっとそれを直してみせる。
さて、再度爆発したわけだけど……、私が思うに、これは魔法道具の故障が原因ではない。
状態は新品と言って良い状態に戻っていたし、最初に私が触った時は正常にヒロタくんが機能していた。
つまり、ヒロタくんの爆発と因果関係を持つのはただ一つ。
「原因はノワかも」
「はい? えっ、つまり、私の奇跡に爆発が追加されたってことですか?」
「そんな奇跡あってたまるか。そうじゃなくて、ノワがヒロタくんに触ることが爆発のトリガーになってるんじゃないかってこと」
「いやいやいや! そんなことないですよ! 私とヒロタくんは仲良しなんですから!」
「会って数分だよね?」
「会って数分で友達面できるのが私という人間なんです! それにヒロタくんもそう思っているはずですよ! ねぇ? ヒロタくうぎゃああああああああああああああ!!!!!」
「懲りないなこいつ……」