☆【園田日菜子】☆
最初、言葉を詰まらせてしまった。
私と若月くんだけがいる教室に雨の音だけが響いていた。
生まれて初めて面と向かってされた告白。それはとても嬉しくて、それ以上に驚いた。
これまでもLINEとか電話なんかでは告白されたことはある。でも、二人きりの場所で、文字にすればたった四文字のストレートな言葉で「好きです」と言われたのは初めてだった。
私は動揺して、目が泳いでいるのが自分でもわかった。そんな表情を若月くんに見られたくなくて、思わずパッと顔を下に向けた。
しまった。若月くんは凄く勇気を振り絞って告白してくれたはずなのに、すぐに顔を俯かせてしまうなんて失礼だった。
丁度、私の前髪が垂れ下がっていて目元は隠れている。目が合うことはないだろうと、視線だけを動かして若月くんを見つめる。
若月くんの顔は凄く赤くなっていた。その姿はとても柔らかく輝いて見えた。真っ暗な夜に優しく道を照らしてくれる月みたいだなって思った。
若月くんは、私が見ている色褪せた世界にも光を届けてくれるかもしれない。
正直にいうと、若月くんのことは男の子として好きかどうかはわからなかった。でも、側にいれば、私が見たことのない世界を見せてくれそうな若月くんのことを好きになれるかもしれない。そんな気がしたから、私は告白を受けることにした。
「え、園田さん、本気?」
自分から告白してきておいてその反応はどうなんだ。それがおかしくて私は思わず噴き出して笑った。若月くんもつられて笑って、放課後の教室に二人分の笑い声が響いていた。