☆【園田日菜子】☆
私は病気で倒れたんだ。ご飯もまだスープ状のものじゃないとダメで、私の為にそうしてくれてるんだってことは何度も聞いた。
今度はちゃんと食べよう。いつもそう思う。でも、ご飯を見ると胸が苦しくなる。悲しくなって、本当は私のためじゃなくていじめようとしてるんだって気持ちに支配される。
一度膨れ上がった気持ちは引っ込みがつかなくなり、怒りが抑えきれずに感情が爆発する。
その度にお母さんを困らせる。看護師さんは「良いよ」と優しく言ってくれる。またやっちゃった。次はちゃんと食べようって反省するのに、ご飯を見るとダメになる。
そのせいで若月くんを怒らせてしまった。
トレイを持っていってくれた若月くんの背中は寂しく見えた。部屋に戻ってきたら謝ろう。次は食べるって約束をしよう。若月くんと約束したら、きっと食べられるから。それと、また来てくれるよねって確認もしよう。
でも、若月くんは戻ってきてくれなかった。
涙が溢れる。悲しさが抑えられなくて、声にもならない嗚咽を漏らす。
小さな子供に戻ってしまったみたい。嫌なことから逃げる為に怒りを爆発させてしまう。そのことを反省したら涙を止められなくなる。
どんどん自分のことが嫌いになっていく。
体もちゃんと動かせない。満足に座ることもできない。感情のコントロールができない。高校生にもなって何やってるんだって、自分が恥ずかしい。
きっとこれも全部、病気のせいなんだ。病気が私を壊していく。病気のせいで私はみんなを困らせて、若月くんを怒らせた。
病気が治れば全部元通りになるんだよね。でも、病気を治すのが病院じゃないの? それなのに治る気配なんて感じられない。
本当に私を元に戻してくれるの?
本当は戻す気なんて無くて、リハビリも私が動けるようにする為じゃなくて、満足に動けない私を見て笑ってるんじゃないの?