side暁
「そこで相談なんだが、美香にそれとなく説得してくれないだろうか?」
「はぁ…
しかし、本人同士が好き合っているものを、俺が説得したところで…」
「元許嫁の君の話なら、聞くんじゃないだろうか?」
「うーーーん…
その手の事は得意分野じゃないが…」
「美香は商才もあるし、射撃の腕も確か。
肝っ玉も座っていて、ヤクザとして僕の右腕になる力は充分にある。
それが、警察官と結婚するなんて…
君の所の神桜さんなんか、男前だし、美香に似合うと思うんだが…」
西園寺は言う。
「神桜は、好きな女が居るぞ。
あいつも一度決めたら、動かんからな。」
「とにかく…
結婚するにしても、その相手に警察官を辞めてもらって、婿養子にしたいんだよ、せめて。
頼む!
説得してくれ!」
まいったなこりゃ…
恋愛の事なんぞ、分からんぞ…
俺は一応話をしてみる、と言って居酒屋を後にした。
美香は今まで、もちろん俺に好意はあっただろうが、それは家の面子があっての事だった。
警察官を好きになる、と聞いた辺りで、美香は本気だと、なんとなく直感的に思った。
しかし、西園寺の手前、一応話をするポーズだけでもしないとまずいだろう。
俺は久しぶりに美香にLINEした。
『明日話がある。
昼12時に渋谷の駅前のいつものレストランで待つ。』
すぐに、美香から返事が来た。
『分かった。』
と。
俺はそして、夜宵の待つマンションに帰っていった。
そして、今日、神桜に言われた事、西園寺との話、色んな事を考えながら、夜の道を歩いていった。