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第72話 おかえりなさい

暁さんが、久しぶりの会社から帰ってきた。


その表情はなんだか、苦虫でも噛み潰したように渋い顔だった。


「遅かったけど、どうかしたの?」


私は手羽先とナスの煮物、味噌汁を用意しながら、聞いてみた。


「あぁ…

そっか。


悪い。


飯食ってきたんだよ。」


「えぇ!?


もう!

それなら、LINE一本くれればいいのに!


もったいないじゃない!」


私は結婚3年目ぐらいの奥さんのように暁さんに文句を言った。


「悪い、忘れてた…」


「何かあったんでしょ?

教えてくれないの?」


「人の事だから、そんなにベラベラ喋る訳にはいかんだろ。」


暁さんは、冷たい。

そう、冷たい。

ドライアイスよりも冷たい。


神桜さんだったら…


もっと優しくしてくれるのかな?


ふと、そんな事を思ったりする。


「何考えてんの?」


「しーらない!」


私は仕返しするかのように、ぷいと横を向いて言う。


「…明日昼間居ないから。

留守番頼んだぞ。」


「え、今日もいなかったのに、またなの…?」


「なんだよ、そんなに俺に一緒に居て欲しいのか?」


暁さんが、私を後ろから抱きしめる。


「ご飯中!」


私は本当に可愛くない。


「はいはい。

とにかく、明日頼んだぞ。


お土産買ってきてやるよ。

いい子にしてたら。」


「なによ、人の事子供みたいに。」


「胸は子供サイズだろ。」


「し、し、失礼ね!

もう、知らない!」


暁さんは、やっとリラックスしたように笑った。


その笑顔が、私を癒してくれる。


どうして、もっと可愛く、好きなの!って言えないんだろうか…?

でも、もしも、迷惑だってフラれたら…?


きっと私は立ち直れない…








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