水城怜生
文芸・その他純文学
2025年10月22日
公開日
1万字
連載中
数字だけが評価される広告業界で、心をすり減らしながら働く青年・健太。
炎上対応に追われ、誰のために働くのか見失いかけたある夜、彼はオフィスの片隅で「鬼十則」と書かれた古い額縁を見つける。
そこに刻まれた言葉――「摩擦を恐れるな」。
それは過去の遺物に思えたが、上司・藤田の語る“熱狂の時代”をきっかけに、健太は自分の中で何かが動き出すのを感じる。
失われた情熱、数字に支配された現代、そして父や祖父が生きた“轍(わだち)”の記憶。
SNSの悪意と向き合いながら、健太は自分だけの羅針盤を探し始める。
やがて、父から受け継いだ万年筆と、恋人・美咲の温もりが、彼に新しい“仕事の意味”を描かせていく。
過去と現在、理想と現実、そして個と社会――
その狭間で立ち止まったすべての人に贈る、再生と希望の物語。