名門を捨てた後、私は元婚約者が手の届かない業界伝説になった
みことはべ
恋愛現代恋愛
2025年11月05日
公開日
3.9万字
完結済
十年間、私は高坂を想い続けた。
けれど、もう心は擦り切れ、想いは静かに途絶えた。
私は彼を諦め、完璧な財閥の御曹司――加城の求婚を受け入れた。
彼は私のために夜空を染めるほどの花火を上げ、
愛の証として、小島ひとつを買い取った。
だが、結婚式の一週間前――
彼は、突然姿を消した。
ようやく見つけ出した彼の口からこぼれたのは、冷たい笑い声だった。
「あいつと結婚するのは、高坂を苛立たせるためさ。
もう飽きたし、式をすっぽかして街の笑い者にしてやる。おもろいだろ?」
私は微かに笑みを浮かべ、録音データを保存した。
そして何も言わず、婚約者のもとを去った。
結婚式当日。
私は華やかな衣装に身を包みながらも、式場には現れなかった。
代わりに、全世界へ向けて――
彼の醜悪な言葉を録音ごと流したのだ。
三年後。
私は広告業界で名を馳せる新星となっていた。
再び現れた彼は、かつての傲慢さを失い、みじめに許しを請う。
そんな彼に、私は静かに微笑み、名刺を差し出した。