丹空舞
現実世界現代ドラマ
2025年11月28日
公開日
2,651字
連載中
キャリアを積み、大企業で仕事一筋に生きてきた神田美月(かんだみつき)。誰よりも働き、周囲から頼りにされ、確実に出世してきた。あと3ヶ月で32歳の誕生日が来る。恋人は社内の出世頭、年上の上司である結城真(ゆうきまこと)。もうすぐ完璧な婚約者と結婚するのだ。
ある日、取引先への祝い花を注文するために立ち寄った駅ビルの花屋で、若くて長身の店員、暁斗と出会う。
柔らかい声と落ち着いた仕草に、不意に心が緩む。それは忙しい毎日の中で、ほっと息がつける小さな癒やしの時間だった。
しかし後日、婚約者から突然の婚約破棄を告げられる。
理由は別の女性の妊娠。
金は払うから黙っていろという冷たい言葉をかけられた美月は絶望する。
職場では毅然としているが、友人に連れられて訪れたレストランで、涙でぐしゃぐしゃになる美月。
そこに偶然にも、再び暁斗が現れる。
実は暁斗の勤めている花屋は、駅ビルにあり、暁斗は駅ビルのオーナー。
つまり、大企業の御曹司。しかし、暁斗はまだ美月に真実を告げない。
その夜、美月は初めて、自分がどれほど疲れていたかを思い知る。
ただの年下の男としての暁斗に癒やしを感じる美月。
職場では元婚約者の噂や圧力が続き、心が折れそうになる日々。
けれど、雨の日に差し出された傘や、疲れた夜に交わす短い会話、さりげない優しさ。
年下で射程範囲外の暁斗に、美月の心は少しずつ引き寄せられていく。
しかし、ある日、暁斗と不適切な関係なのではと職場にリークされる。
匿名の告発者は実は、元婚約者の結城だった――。
皮肉にも、この告発で美月は暁斗がただの花屋でなく、資産家の御曹司であることを知る。
暁斗にも会社にも迷惑をかけたくないという思いから距離を置こうとする美月。
互いの気持ちは交錯しながら届かない。
そんなある日、誰も出てこない花屋の奥で、暁斗が倒れていて――?