聴覚障害のフラワーデザイナーを見合い相手が侮辱――十年想い続けた御曹司が宣言『彼女は俺が好きな女性だ』
ゆらら
恋愛現代恋愛
2026年02月24日
公開日
1.7万字
連載中
桜井美月は、北条悠真に十年間片想いしてきた。
十年前、桜の木の下。
彼が散らばった彼女の絵筆を拾ってくれたあの日、彼女は一目で恋に落ちた。
この十年で、彼の「知らない」という言葉を三度聞いた。
一度目は大学卒業の日。
告白しようとしたその瞬間、彼が友人にこう言うのを耳にした。
「桜井美月? 知らないな。」
二度目は銀座のレストラン。
見合い相手に侮辱されていた彼女を、彼が偶然助けてくれた。
だが元婚約者に「こちらは?」と聞かれると、彼は淡々と答えた。
「知らない。たまたま居合わせただけだ。」
三度目は――なかった。
雨の夜、彼の車が彼女の前に止まったからだ。
「乗って。ひまわりの君。二年前、僕に傘を貸してくれただろう?」
彼はすべて覚えていた。
彼女がパクチーを食べられないことも、ふとしたときの表情も、十年前、桜の木の下に立っていた姿も。
ただ、あの頃の婚約が、彼を彼女に近づけなかった。
「ごめん。鎖を断ち切るのに十年かかった。……今、君を追いかけてもいい?」
十年の片想いの果てに、彼はついに言った。
「桜井美月、僕と結婚してください。」
彼は彼女のすべてを覚えていた。
抱きしめるその一瞬のために、十年を費やして。