八月 猫
ミステリー推理・本格
2026年04月21日
公開日
1万字
完結済
時は昭和20年代後半。
戦後の混迷期を抜け、世間は徐々に落ち着きを見せ始めていた。
K県のある農村部。
ある時、その田舎の屋敷にて親戚一同を集めた法事が行われていた。
その最中、本家の総領である葛飾蔵之介が不審な死を遂げる。
警察はその場に集まっていた関係者の証言の結果、蔵之介の死は事故死と判断され処理されたのだが……。
時は流れ――
警視庁に勤める幸田次郎は、偶然知り合った葛飾家の長男の一之介から父親の死は事故ではなく殺人であるとの告白を受ける。
しかし、すでに蔵之介の死から十数年が経過しており、当時子供だった彼の証言を証明することは難しい。
一之介の話を聞いても本当に事件だったのか判断がつかなかった幸田は、作家である紫門 彦齋(げんさい)の下を訪れる。
「ふん。なかなかに胸糞の悪い話じゃないか」
話を聞き終わると、紫門は表情を変えぬまま憤りを見せた。
そして紫門は事件の、時代の膿を抉り出す。