結婚記念日に夫の不倫を目撃した私を、財閥御曹司だけが二十年かけて想い続けていた
きっとう
恋愛現代恋愛
2026年07月02日
公開日
5.9万字
完結済
銀座の会員制クラブの前で、私は偶然、夫が友人に笑いながら言うのを聞いてしまった。
「結婚なんて、ただの賭けだったんだよ。まさか本気にするとは思わなかった」
三年間の結婚は、ただの酒の席の冗談だった。
私は離婚届にサインし、会社近くのアパートに移り住み、やり直すと自分に言い聞かせた。
しかし深夜の残業帰り、エレベーターが故障し、私は暗闇に閉じ込められた。
閉所恐怖症が襲ってきたその時、扉の向こうから低く優しい声がした。
「怖がらなくていい。ここにいる」
その声は、七年前、山で遭難した私を救ってくれた人と同じだった。
それからしばらく後。
元夫が新しい恋人を連れてパーティーで私を嘲笑した時、会場は私の失笑を待っていた。
その瞬間、彼が現れた。
エレベーターの前で一晩中寄り添ってくれた医師が、仕立ての良いスーツを纏い、財界の重鎮たちに囲まれて会場へ入ってきた。
そして彼は、皆の前で私の腰を抱き寄せる。
「彼女に対して、礼を欠く発言はやめていただきたい」
元夫の顔は一瞬で青ざめた。
彼は気づいたのだ。
その男が、長谷川財閥の正統な後継者であり、
自分が七年間“偽っていた救命恩人”その本人だということに。
そして私はその日初めて知る。
この人は六歳の時に私と出会ってからずっと、
医師になることも、私を守ることも、そして財閥を捨てることさえも——
すべてを“私のため”に選び続けていたのだと。