浮気されたその日に、私はクズ男の叔父と結婚した――けれど財閥の大物である彼は、七年間ずっと私を探していた
蜜茶ωうさぎ
恋愛現代恋愛
2026年07月09日
公開日
3.5万字
連載中
指輪を踏み砕かれたあの夜、私は思わず「婚約、破棄します」と口にした。
すると彼の叔父は、たった一言だけ返した。
「いい」
そして翌日、私たちは婚姻届を提出した。
その時になって初めて知ったのだ。
私が拾ったその人が、“隠れ財閥”そのものだったことを。
元婚約者は、私のことを「大げさだ」とでも言いたげだった。
けれどその後、愛人を囲うために公金を流用していたことが発覚し、炎上の末に世間から叩かれ、社会的に完全に終わった。
味方も離れ、居場所も失い、あっけなく転落していった。
実父もまた、私を利用して上流の縁談に押し込もうとしたが、彼のたった一本の電話で何も言えなくなった。
そのうえ経済犯罪の証拠まで揃い、最後にはそのまま逮捕された。
パーティー会場では、あの女が皮肉たっぷりに私を挑発してきた。
けれど彼は静かに、そしてはっきりと言った。
「ここは雫の家です」
その一言だけで、相手の顔色はみるみる青ざめた。
周囲は息を呑み、その場の空気が一瞬でひっくり返るのが分かった。
私は、この結婚はただの“間に合わせ”だと思っていた。
けれどある日、彼の書斎で鍵のかかった引き出しの中から、一枚のデザイン画を見つけた。
それは十九歳の私が描いたものだった。
そこでようやく知る。
十数年前、私が人生でいちばん暗かった時期を支えてくれた、あのネット越しの相手。
ずっと探していたその人が――彼だったのだと。
彼は何年ものあいだ真実を口にせず、ただ静かに、私の悔しさも、仕事も、人生そのものも、そっと掌の中で守り続けていた。
真実を知った日、私は二日ほど彼を避けて拗ねてみせた。
でも本当は、とっくに心なんてとろけるほど柔らかくなっていた。
そして最後に彼は、皆の前で私を正式に一族の中枢に迎え入れた。
それが彼なりの“公式発表”だった。
「愛している」と言う代わりに、
自分が与えられる最高の場所へ、私を立たせてくれたのだ。
敵だった人たちは、そろって自滅して舞台から消えていった。
でも私と彼の物語は、そこからようやく始まった。
彼は、私が思っていたよりずっと早くから私を知っていた。
七年前、私が何気なく口にした言葉を、彼はひとつ残らず覚えていた。
そして私があの一枚の絵を見つけた時、初めて分かった。
彼が私を探し続けていた時間は、丸七年に及んでいたのだと。
母