あらすじ
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指輪を踏み砕かれたあの夜、私は思わず「婚約、破棄します」と口にした。 すると彼の叔父は、たった一言だけ返した。 「いい」 そして翌日、私たちは婚姻届を提出した。 その時になって初めて知ったのだ。 私が拾ったその人が、“隠れ財閥”そのものだったことを。 元婚約者は、私のことを「大げさだ」とでも言いたげだった。 けれどその後、愛人を囲うために公金を流用していたことが発覚し、炎上の末に世間から叩かれ、社会的に完全に終わった。 味方も離れ、居場所も失い、あっけなく転落していった。 実父もまた、私を利用して上流の縁談に押し込もうとしたが、彼のたった一本の電話で何も言えなくなった。 そのうえ経済犯罪の証拠まで揃い、最後にはそのまま逮捕された。 パーティー会場では、あの女が皮肉たっぷりに私を挑発してきた。 けれど彼は静かに、そしてはっきりと言った。 「ここは雫の家です」 その一言だけで、相手の顔色はみるみる青ざめた。 周囲は息を呑み、その場の空気が一瞬でひっくり返るのが分かった。 私は、この結婚はただの“間に合わせ”だと思っていた。 けれどある日、彼の書斎で鍵のかかった引き出しの中から、一枚のデザイン画を見つけた。 それは十九歳の私が描いたものだった。 そこでようやく知る。 十数年前、私が人生でいちばん暗かった時期を支えてくれた、あのネット越しの相手。 ずっと探していたその人が――彼だったのだと。 彼は何年ものあいだ真実を口にせず、ただ静かに、私の悔しさも、仕事も、人生そのものも、そっと掌の中で守り続けていた。 真実を知った日、私は二日ほど彼を避けて拗ねてみせた。 でも本当は、とっくに心なんてとろけるほど柔らかくなっていた。 そして最後に彼は、皆の前で私を正式に一族の中枢に迎え入れた。 それが彼なりの“公式発表”だった。 「愛している」と言う代わりに、 自分が与えられる最高の場所へ、私を立たせてくれたのだ。 敵だった人たちは、そろって自滅して舞台から消えていった。 でも私と彼の物語は、そこからようやく始まった。 彼は、私が思っていたよりずっと早くから私を知っていた。 七年前、私が何気なく口にした言葉を、彼はひとつ残らず覚えていた。 そして私があの一枚の絵を見つけた時、初めて分かった。 彼が私を探し続けていた時間は、丸七年に及んでいたのだと。 母閉じる
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創意工夫ありし者創意工夫ありし者2026-07-09 19:09ネオ・デビューネオ・デビュー2026-07-09 19:09作者のひとりごと作者のひとりごと
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