三周年の夜、私を階段から突き落とした夫——離婚した今、私は別の男性と次のデート先を相談している
黑i
恋愛現代恋愛
2026年07月21日
公開日
4.8万字
完結済
結婚三周年の日、私は一番上等な訪問着をまとい、銀座の料亭へ向かった。
襖を開けると、夫が別の女性の前で片膝をつき、その薬指に指輪をはめていた。
「罰ゲームだよ」
夫がそう言うと、その場にいた全員が笑った。私も笑った。
バッグに手を入れ、手帳の扉に自分で書いた言葉を指先でなぞる。
——五回まで。
一度目は、彼が私の誕生日を忘れたとき。
二度目は、私が高熱を出しているのに、彼女のパーティーへ付き添ったとき。
三度目は、「彼女のほうが僕を必要としている」と言われたとき。
四度目は、私の目の前で「彼女が去ったから君と結婚した」と言われたとき。
そして、これが五度目。
私は自分に言い聞かせた。
これで最後にしよう、と。
それでも二か月後、妊娠した。
この子がいれば、何かが変わるかもしれない。そう信じてしまった。
けれど、階段の途中で彼女は私の手首をつかみ、笑いながら囁いた。
「その子、本当に彼の子なの?」
次の瞬間、彼女は手を離した。
私は階段を転げ落ちた。広がったスカートの裾が、血で赤く染まっていった。
夫が連絡を受けたとき、彼は彼女の美容施術に付き添っていた。
返ってきた言葉は、たった一言だった。
「今は行けない」
もう二度と許さないと心の中で決めた