結婚記念日、夫は息子を連れて初恋の女の誕生日を祝った
レイ
恋愛現代恋愛
2026年07月28日
公開日
5,751字
連載中
神谷恭介はずっと、妻は収入も少なく、能力も平凡で、自分なしでは生きていけないと思っていた。
彼は知らなかった。
紗月がかつて神谷家のために、ケンブリッジ大学からの招待を諦めたことを。
そして彼女が半年をかけ、二度目の挑戦を終えていたことを。
紗月が片道切符を手に家を出たあと、恭介は書斎で、彼女が獲得してきた数々の国際建築コンペの賞状を見つける。
息子がアレルギー発作で救急搬送されたとき、恭介は薬の名前を一つも答えられず、紗月が残した記録を必死に探すしかなかった。
二年後。
授賞式で呼ばれた名前は、もう「神谷紗月」ではない。
「東紗月」だった。
恭介は皆の前で認めた。
収入を理由に彼女の仕事を見下したこと。
知人たちが彼女を侮辱しても、黙って見過ごしたこと。
そして息子を利用し、彼女に犠牲を強い続けたことを。
彼はようやく彼女の仕事を尊重し、彼女が決めた面会のルールを守るようになった。
息子を会わせる日でさえ、約束の場所まで送り届けると、それ以上は近づかずに立ち去った。
けれど紗月が受け取ったのは、息子が自分の手で焼いたクッキーと、あまりにも遅く訪れた成長だけだった。