妹に陥れられ婚約を壊された私――逃げた夫は、長年探し続けた命の恩人が私だったと知る
Verity
恋愛現代恋愛
2026年08月11日
公開日
2.3万字
連載中
二年前。
綾小路澄香は、激しい雨の中で一人の傷だらけの男を救った。
彼女は行灯の明かりを手に、七日間ずっと彼のそばにいた。
自ら傷の手当てをし、退院の日には自分の御守りを彼の手に握らせた。
彼は言った。
「必ず戻ってくる」
「その時は、君を妻にする」
澄香が待っていたものは――
プロポーズではなかった。
一枚の婚約破棄の書類だった。
妹・美咲は、祖父から受け継いだ骨董品を壊した。
そして涙ながらに澄香へ頼んだ。
「お姉ちゃん、私の代わりになって」
母親は澄香の前に跪き、言った。
「あなたは姉でしょう?」
「妹に譲るのは当然よ」
澄香は、すべてを受け入れた。
婚約破棄の噂は、瞬く間に京都の社交界へ広がった。
誰もが言った。
「彼女は品行方正ではない」
「名家の宝を壊した女だ」
澄香は家を追い出された。
そして青森の古いアパートで、一人、壊れた照明を修理しながら暮らした。
二年後。
彼女は修復師として、再び京都へ戻ってきた。
元婚約者は、彼女の店の前で跪いていた。
「澄香……」
「すべて誤解だったんだ」
そう彼女の名前を呼び、許しを求めた。
けれど――
今、彼女の隣に立っているのは別の男だった。
彼女へ向けられるすべての悪意を遮り、
何も言わず彼女を守る人。
それは、かつて澄香がただの“契約相手”だと思っていた――
契約結婚の夫だった。