午後九時から妖怪が現れる商店街で、俺は臨時夜番人になりました
伊達ジン
現代ファンタジー都市ファンタジー
2026年08月16日
公開日
4,898字
連載中
地方都市の狐火商店街。昼は客足の減った古いアーケードだが、午後9時の閉店放送を境に、そこは妖怪たちの生活圏と重なり始める。
松本健太郎、24歳。実家の稲荷神社を継ぐ覚悟も、定職に就く意欲も決められないまま、商店街の店番や荷運びを請け負って暮らすフリーターだった。そんな彼が、巡回を続けられなくなった前任者に代わり、商店街の臨時夜番人を引き受けることになる。
夜番人の仕事は、現れた妖怪を片っ端から退治することではない。捨てられると思い込んだ付喪神、閉店によって居場所を失う妖怪、代替わりの中で忘れられた約束。人間と妖怪、それぞれの事情を聞き、店の商品や設備、商売の知恵まで利用して、怪異が起きた原因そのものを解いていく。
やがて一軒一軒の小さな事件は、傷ついた石標、減り続ける店と人通り、狐火祭り、そして商店街を揺らす再開発へとつながっていく。さらに、喫茶店、金物店、呉服店、精肉店、書店、電器店、菓子舗で働く女性たちも、それぞれの得意分野で夜番を支え、仕事を重ねるほど健太郎との距離を変えていく。
古い街をそのまま閉じ込めるのでも、すべてを新しく塗り替えるのでもない。人間も妖怪も、この先も暮らしていける場所を探すため、狐火商店街の長い夜が始まる。