元彼の七度目の婚前パーティーが終わる前に、私は彼の兄との婚姻届を提出していました
Kyūketsuki dakedo yū
恋愛結婚生活
2026年08月18日
公開日
2.5万字
連載中
藤原祐里恵は、真賀田明郎を五年間待ち続けた。
二十歳の彼が言った。
「卒業したら結婚しよう」
その言葉を信じて、二十五歳になった今も――
彼はまだ言った。
「もう少し待ってほしい」
祐里恵は、彼のためにすべてを支えてきた。
家族からの重圧も、結婚の準備も、すべて一人で背負った。
けれど明郎がしていたことは――
夜の街で別の女性を抱き寄せ、キスをすること。
婚前旅行で、別の女と手を繋ぐこと。
そして、彼女が別れを告げても、
「ただの気まぐれだろ」
そう決めつけることだった。
それどころか、最後にはこう言った。
「俺の兄さんに説得してもらえば、考え直すだろ」
祐里恵は泣かなかった。
彼を責めることもしなかった。
ただ、五年間の思い出を消し、彼の部屋の予備鍵を返した。
そして、その夜。
彼女の家の扉を叩いた一人の男がいた。
手には、塩豆大福の箱。
「もし、結婚を取り消す気がないのなら――相手を変えるという選択肢も考えてほしい」
その男は、真賀田明郎の兄だった。
十五年間、彼女を想い続けながら。
彼女の幸せを壊さないよう、ただ遠くから見守ってきた人。
祐里恵が婚姻届に名前を書いた日。
元恋人は軽井沢で、焚き火を囲みながら別の女性と踊っていた。
その頃――
彼女の新しい夫は、赤く潤んだ瞳で、
人生のすべてをかけて書き続けてきた段取帖に、
彼女の名前を書き込んでいた。