百年旅館を潰す女と呼ばれていますが~先に潰れるのはそちらのようです~
早田 陣
現実世界仕事・職場
2026年08月24日
公開日
7,200字
連載中
水城真帆は、十五年間、店舗閉鎖や営業所統合、不採算事業の整理ばかり任されてきた会社員。
新しい仕事を望んでも、返ってくるのは「水城に抜けられると困る」の一言だった。
そんな彼女が応募したのは、創業百二十年の温泉旅館・花乃井の後継者募集。
ホテル経験者たちが再建案を語る最終選考で、真帆だけは言い切った。
「私なら、閉めます」
落ちたと思った。
だが、老女将が告げたのは――
「花乃井の、最後の女将を」
旅館は閉める。
けれど、庭も、働いてきた人たちも、百二十年の記憶も、全部まとめて捨てる必要はない。
真帆が始めたのは、旅館を救う仕事ではなく、上手に終わらせる仕事だった。
そこへ「花乃井を残す」と称して、土地を安く手に入れようとする地元建設会社が現れる。
真帆の武器は、十五年かけて身につけた実務と、記録と、数字。
百年旅館を潰す女は、何を終わらせ、何を次へ残すのか。
これは、誰かに決められたものを閉め続けてきた女が、初めて自分で「終わり」と「その先」を選ぶ物語。