東堂社長が傷つけてしまった妻こそ、彼の最愛の人でした
やわはね
恋愛現代恋愛
2026年09月03日
公開日
11.7万字
連載中
深夜、激しい雨が降り続く市立病院。
「頭部に軽い脳震とうがあります。腹部にも強い衝撃を受けていて……赤ちゃんは助かりませんでした」
麻酔で意識が朦朧とする中、東堂陽菜は確かに感じていた。
自分の中で、大切な命が消えていく感覚を――。
五年間、陽菜は夫・東堂誠司を愛し続けてきた。
いつか彼が自分を見てくれると信じ、妻として尽くし、耐え続けてきた。
だからこそ、待ち望んでいた二人の子どもが生まれれば、きっと夫婦の関係も変わる。そう信じていた。
しかし、赤ちゃんを失った彼女が病室で聞いたのは、夫の冷たい声だった。
「彼女のことは気にするな」
事故のきっかけとなった女性を責めることもなく、傷ついた妻のもとへ駆けつけることもない。
誠司が守ろうとしたのは、陽菜ではなかった。
その瞬間、陽菜の中で最後に残っていた愛が崩れ落ちた。
愛は、努力すれば手に入るものではない。
どれだけ尽くしても、どれだけ待ち続けても、心が離れた人を変えることはできない。
涙を流しながら、陽菜は決意する。
もう、愛されるために自分を犠牲にする人生は終わりにする――。
そして彼女が告げた言葉。
「私、離婚したい」
最愛の夫を失った妻が、今度は自分自身の人生を取り戻していく。
そして、大切なものを失って初めて、冷酷な男は気づくことになる。
本当に失ってはいけなかった存在が、誰だったのかを――。