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偏差値39、いちばん後ろの席から ~横浜の坂をのぼる、中学受験二年半~
偏差値39、いちばん後ろの席から ~横浜の坂をのぼる、中学受験二年半~
やますたいる
現実世界青春学園
2026年09月07日
公開日
2,086字
連載中
小学4年生の6月、山口ももは横浜みらい塾のいちばん後ろの席にいた。成績順に席が決まる教室で、算数は150点満点の52点、総合偏差値は39.2。それでもももは志望校調査の紙に迷わず「港星女子中学校」と書く。坂の上に建つ白い校舎だ。春の学校公開で覗いた理科室の水槽と、ヨコエビについて質問したとき、上級生が返した「いい質問だね」の一言が忘れられなかった。紙は「現状の成績ではかなり努力が必要です」という赤字とともに戻ってくる。ももはそれを四つに折り、筆箱の底にしまう。 「できない」と決めてから読む癖は抜けず、4年生の冬、38点の答案を駅のトイレで破り捨てる。嘘をついた夜、母は叱らずに「やめてもいいよ」と言い、ももは自分が受験をやめたくないことに初めて気づく。転機は祖母の家で見た古い地図だった。海だった場所が埋め立てられ、街の形が変わっている。ももは「横浜ふしぎノート」に疑問を書きためるうち、地図の縮尺の計算がそのまま算数だと気づく。 5年生。新しい算数講師の成瀬は黒板に「間違いは宝物」と書き、「算数ができないんじゃない、問題から逃げているだけだ」と告げる。間違いを「どこでだまされたか」で分類する犯人さがしのノートが生まれ、点数は42点から82点へ動く。一方で土曜に親友の咲良と遊べない日が増え、父の作った隙間のない計画表をめぐり衝突する。受験するのはだれなのか。ももは自分で時間割を作り直し、「横浜ふしぎノート」と「何もしない」の枠を残した。 6年生の夏、港星の過去問は算数36点、合格最低点に61点届かない。模試の偏差値は45、判定は20パーセント。祖母は坂を上りながら、上っている途中は景色が変わらないのだと話す。坂の上には海が見えた。ももは点数の下に「次は何を変えるか」を書くようになる。10月、干潟の生物の資料問題が出た。知らない生き物ばかりでも、資料を読めば解ける。総合偏差値56.4、初めての合格圏だった。 だが11月には52.3に落ち、12月の過去問はなお11点足りない。第一志望を前に泣く同級生の凛と踊り場で語り合い、算数と理科を教え合う仲になる。2月1日、ももは坂を上り、見たことのない大問4に手を止めながらも空欄を残さず解き終える。午後6時、画面に出たのは「合格」の二文字。凛は第一志望に届かず、港星で一緒になる。4月、あの坂を上ったももは、教室の窓から海を見る。

34_第34話_春の坂

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