夫が家政婦の娘と浮気し、私を追い出した後で気づいた――私が本当に愛していたのは兄ではなく、ずっと彼自身だった
テイフウ
恋愛現代恋愛
2026年09月09日
公開日
2.4万字
連載中
結婚式の日。
婚約者は、家政婦の娘と一緒に逃げた。
そして彼の弟が、兄の代わりに私と結婚することになった。
その夜。
彼は、ベランダで泣いている彼女を見つけ、冷たく笑った。
「俺と結婚するのが、そんなに悲しいのか?」
五年間の結婚生活。
彼は毎週違う女性を家へ連れてきた。
一番長く続いた相手でさえ、四ヶ月だった。
火災が起きたあの日。
彼はその女性を抱きかかえて、迷わず外へ逃げた。
彼女は濃い煙の中に倒れたまま、遠ざかっていく彼の背中を見つめていた。
彼女は離婚届に署名した。
けれど彼は、それを破り捨てた。
彼女が片道切符を買った日。
彼が電話をかけると、番号はすでに使われていなかった。
その後。
彼は彼女のアトリエの隅で、一冊の日記を見つけた。
最初のページに書かれていた名前は――
彼自身の名前だった。
十六歳のあの日から。
彼女がずっと愛していた相手は、最初から彼だった。
彼は床に跪いたまま、その日記を最後まで読み終えた。
五年間の苦しみ。
三十七人の女性。
あの火災。
そのすべては、たった一つの間違った思い込みの上に成り立っていた。
彼は必死に説明しようとした。
彼女を取り戻そうとした。
けれど、もう遅かった。
彼女はニューヨークのアトリエで、母親の姓を名乗った新しい名前にサインをしていた。
――彼女が去る時、振り返ることはなかった。
彼だけが、あの梅雨の季節に取り残された。