電界特捜 電現室-DENGENSHITSU- ―喪失戦線―
不治痛
SF空想科学
2026年10月04日
公開日
4,578字
連載中
数年前、ある技術者が世界をひとつ増やした。
超弦理論の先に見つかった仮想の現実、インター・ヴァーチュア。そこでは時間が、現実の倍の速さで流れる。
2023年。人はまだ向こう側に住んではいない。それなのに、この国の電気も水も列車も、いつの間にか向こう側で動かされていた。向こうに広がるのは国境のない土地で、あるのは企業が線を引いた支配域だけ。そこでは警察手帳も、名刺と変わらない。
仮想と現実の境目で起きる、どの役所も手を出したがらない事件。それを扱うために、霞が関の合同庁舎の地下二階、元・電源室に、公安と内閣情報調査室が非公式の部屋を置いた。
正式名称、電地現治安予備室。通称「電現室」。
「幽霊に見えるなら、まず幽霊として調べる」
そう言ってはばからない、オタクでコスプレ好きのキャリア警部補・華園夏菜子。
部隊を無人機に奪われた、北海道生まれの元対戦車ヘリ乗り・百田多聞一等陸曹。
百田は三叉電気の試作機〈トラ・110式 ワンテンタイガー〉を駆り、向こう側で相棒の盾になる。
二人が追うのは、死者の声、消えない明かり、境目に置き去りにされた人たち。
そして百田には、着任の日に告げられたもう一つの任務があった。
――華園警部補を、見張ってほしい。
これは、仮想の世界がまだ黎明期だったころの、記録に残らない事件の記録。
※『電界駆動ブレード』と同じ世界の、ずっと昔の物語です。本編を読んでいなくてもお楽しみいただけます。
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』