私の仕事を、なかったことにしないで――地下の相談室から始まる逆転
橘廉
現実世界仕事・職場
2026年10月12日
公開日
4,142字
連載中
企画を奪った上司に抗議したら、私の異動理由は「協調性に課題」になった。
防災機器メーカーで働く水野紗季は、自分の企画を上司の手柄にされ、人事へ相談する。しかし、部署を離れることになったのは紗季の方。
異動するなら、と自ら希望したのは、地下のコンプライアンス相談室。
つかみどころのない室長・榊と二人で、消えた警報器、給湯室の悪意ある張り紙、声にならない電話に向き合っていく。
誰が悪いかを突き止めても、相談した人が救われるとは限らない。それでも、聞かなかったことにはしたくない。
やがて、かつての後輩から相談が届く。
身に覚えのない誤出荷。その責任を押しつけようとしているのは、紗季の企画を奪った上司だった。
一方、書庫には十五年前に職場を去った母の通報が、十二通も残されていた。
「検査で残した数値と、提出された記録が違います」
母の訴えは、現在の取引先から届いた相談と重なり始める。
失った評価を取り戻すために始めた仕事が、会社の隠してきた問題へつながっていく。
そして、隣で話を聞いてくれる室長との距離も、少しずつ変わっていく――。