6年同居した幼なじみは、私に隠れて名家の令嬢と婚約した。だが鷲尾家が必死に取り入ろうとしていた取引先の社長は、私だった
キャンディ
恋愛現代恋愛
2026年10月14日
公開日
2.8万字
連載中
交通事故で入院した日、南条綾は病室のテレビで、幼なじみの鷲尾悠一の姿を目にした。
海外出張に行くと言っていた彼は、東京にいた。しかも、名家の令嬢・白鳥玲香の指に、8カラットのダイヤの指輪をはめていたのだ。
綾は看護師に告げた。
「彼、私の夫なんです」
看護師は笑った。
「私だって映画を観ているときは、主人公を自分の夫だって言うことがありますよ」
6年間も一緒に暮らし、家では彼女を「奥さん」と呼んでいた悠一。しかし、彼は一度も婚姻届を提出していなかった。
悠一の父親は綾を「表には出せない人」と呼んだ。彼はただ一言、「分かった」と答えただけだった。
婚約披露宴の翌日、鷲尾家が必死になって取引先との提携を取りつけようとしていた相手が、壇上に立った。
司会者がその名を読み上げる。
「南条綾様」
悠一の顔から、一瞬にして血の気が引いた。
ようやく彼は婚姻届を綾の前に差し出した。
だが、綾は空白のままの氏名欄を見つめ、一文字も書かなかった。