人質として囚われたはずが、ヤクザ組長の溺愛が重すぎて逆に逃げたい!
Emma
恋愛現代恋愛
2026年10月27日
公開日
1.7万字
連載中
十二歳のとき、寺本菜穂子には、どうしても忘れられない人ができた。
――中原裕之。
両親を亡くした菜穂子を引き取り、何不自由なく――いや、それ以上に大切に育ててくれた人。彼は菜穂子を海外へ連れて行き、まるでお姫様のように守ってくれた。
だから菜穂子は、ずっと彼を愛していた。
けれど、勇気を出して想いを伝えた夜、返ってきたのは冷たい拒絶だった。
そして翌朝――中原は別の女とともに、他人のダイヤモンドを奪って姿を消した。
置き去りにされた菜穂子は、中原の敵に捕らえられ、彼をおびき出すための人質にされてしまう。
「動くな。動いたら殺す」
男は菜穂子を腕の中に閉じ込め、気だるげに告げた。
「お前を引き取った男が、俺の女とダイヤを奪って逃げた。だから、お前にそのツケを払ってもらう」
何もかも失った菜穂子は、捨てられた人形のように途方に暮れていた。
けれど、壊れそうな彼女を拾い上げたのは、他ならぬ――彼女を人質にした男自身だった。
北条時川。
菜穂子を囚えたヤクザの組長は、なぜか彼女を手放さず、誰よりも大切に守り始める。やがて菜穂子は、彼にとってかけがえのない存在になっていく。
愛されるとは、守られることではない。何度でも、迷いなく選び直してもらえることなのだと――菜穂子は初めて知った。
中原裕之が彼女を迎えに来たとき、菜穂子は静かに微笑んだ。
「叔父さん。私が愛しているのは、もうあなたじゃない。さようなら」