Norio
現実世界仕事・職場
2026年10月20日
公開日
4.4万字
連載中
「私を返品したのは誰ですか」
静岡の汐見百貨店で十一年、六十二軒の得意客を担当してきた外商員・水野真帆。三十九万六千円の不正請求を報告した翌朝、顧客情報漏洩の疑いをかけられ、得意先はすべて後輩へ渡された。異動先は地下三階の資材係。担当変更の理由は、六十二軒とも「お客様都合」だった。
売場で「返品された外商員」とささやかれる真帆を訪ねてきたのは、毎年同じ日に千百円のハンカチを買う老婦人。疎遠になった娘に、生きているうちに贈り物を届けたいという。その依頼をきっかけに、案内所の片隅で「お買物相談」が始まる。
修理、返品、亡き家族の品の相談。売上につながりにくい依頼を受けるうち、真帆はかつて自分も客の事情を都合よく解釈し、高額な品を売っていたことに向き合う。窓口を続ける条件は、六週間で成果を出すこと。新たな注文を増やし、減った収入も取り戻さなければならない。
やがて、不正請求を追う手がかりが見つかる。そこに関わっていたのは、真帆の再出発を支えてくれた、大切な客だった。
告発すれば、その客を失う。それでも、あの請求を見過ごすことはできない。
顧客ゼロから、自分の判断で注文を受ける仕事を取り戻していく、百貨店を舞台にした逆転の物語。