目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
繕い師の令嬢は、ほころびを知っている
繕い師の令嬢は、ほころびを知っている
amie
異世界ファンタジー冒険・バトル
2026年10月23日
公開日
1.2万字
連載中
伯爵令嬢リディア・フェルンに授けられた魔法は「繕い」。家政婦の魔法と蔑まれ、聖女に選ばれた異母妹セシリアと比べられては冷遇されてきた。だが彼女の目には、王都を守る大結界が光の糸で織られた布に見えていた。聖女の強すぎる祈りが結界を傷めていると知るリディアは、亡き母の跡を継ぎ、誰にも知られず夜ごと鐘楼で結界を繕い続けていた。 ある夜会で、リディアは第二王子エドガーから婚約を破棄される。新たな婚約者は聖女セシリア。父は彼女を厄介払い同然に、魔獣の森と境を接する北の辺境へ送り出す。待っていた「灰の辺境伯」ユリウスが王都に求めたのは、妻ではなく、結界師を失った砦を救う力だった。「春には王都へ帰れ」と告げられ、リディアは客人として遠ざけられる。 満月の夜、魔獣の大群が砦を襲う。命令に背いて城壁へ駆けつけたリディアは、ユリウスに守られながら結界の裂け目を繕い、魔獣の群れを退ける。己の不明を詫びたユリウスに請われ、彼女は砦の結界師として迎えられる。捨てられた令嬢は、兵や領民から慕われる存在となっていく。 一方、繕う者を失った王都の大結界には、目に見える裂け目が広がっていた。焦ったセシリアは祈りを強めるが、それは傷を深めるばかりで、ついに魔獣が王都の街路へ侵入する。窮した王家とフェルン家は、リディアに帰還を命じる。 ユリウスとともに王都へ戻ったリディアは、国王と貴族たちが見守る大聖堂で、聖女にも塞げなかった裂け目を繕ってみせる。鐘撞きのトマスと乳母マルタの証言により、母娘が長年ひそかに王都を守ってきたことも明らかになる。婚約を破棄したエドガーや父をはじめ、かつて彼女を嘲った者たちの前で、リディアは王国唯一の結界繕い師と認められた。 王家から王都に留まるよう請われながらも、リディアは神殿に結界の手入れと祈りの改め方を伝え、北の砦へ帰ることを選ぶ。自分の繕いを、初めて「待っている」と言ってくれた人のもとへ。

第1話 夜会の宣告

loading