なんぜこわすただ
ホラー
|
怪談
ホラー警察田舎ホラー
『なんぜこわすただ』四森 /著
講評
怖い! 田舎の昼行燈風の巡査はミステリやホラーのキーパーソンとしてよくいるキャラですが、ここまで順当に壊れてくるのはなかなか見かけない気がします。
「え、死んだの?」「あれ、生きてない?」という語り部や登場人物の行動が少しずつ信用できなくなっていく、意識が侵食されていくさまが不気味でした。
膳の祠
ホラー
|
ホラーコレクション
祟り・呪い田舎ホラープチコン02・因習村
『膳の祠』高橋志歩 /著
講評
読んでいる途中で画面がエラーを吐いたので本当に怖かったです。侵食タイプの怪異は実は書くのが難しいテーマだと思いますが、認知が少しずつ歪んでいく過程が些細なことの積み重ねでかなり緻密な印象を受けました。
誰かいる気がする、は古典ホラーから愛されるテッパン描写ですがパッケージとしての安心感が花丸でした。日本人に腐飯の話はやめましょう!
ひろまる、ひろまる。
ホラー
|
都市伝説
ダーク祟り・呪い田舎ホラー
『ひろまる、ひろまる。』はじめアキラ /著
講評
見聞きしただけでもらってしまう呪いって、もらい事故ですよね。初手から理不尽だし、全体的に救いがなく個人的には非常に完成度の高い作品だと感じました。
惜しむらくは「壊した」よりも「拡散された」印象のが強く出ている点でしょうか。ただ誤差の範囲ではあると感じます。後味が本当に最悪の1作です。(褒めています)
祠を壊したYouTuberの末路
ホラー
|
怪談
祟り・呪い因習村田舎ホラー
『祠を壊したYouTuberの末路』竹間単 /著
講評
主人公が無個性的なキャラクターなので語り部として信用できる……はずだったのですが、予想通りの予想外、がくる流れは読んでいて気持ちがいいですね。
迷惑系Youtuberとホラーは相性がいいので、因果応報なスカッと要素もいいアクセントになっています。怪異よりはヒトコワ要素が強いので読者をすこし選ぶかもしれません。
ぽこぺん
ホラー
|
都市伝説
和風祟り・呪い因習村
『ぽこぺん』耕す太郎 /著
講評
実際の匿名の吐き出しのような文体が、物語の中身を非常に身近に感じさせます。SNSのハンドルネームも「なんでそれにしたの?」感がリアリティがあっていいですね。
ルール説明とオチが綺麗にかみ合うので読了後もすっきりします。由来やルールがはっきりした話なので恐怖度はそこそこですが万人にすすめられる素晴らしい作品です。
祠 live in Gunma!
ホラー
|
都市伝説
不思議プチコン02・因習村ある意味ホラー
『祠 live in Gunma!』実は犬です。 /著
講評
ホラーといえばホラーなんですが、神様的なサムシングじゃなくて極限状態の人間が怖いよねっていう……語り部そっち側かーい! とツッコミどころも多く、コメディホラー(?)としてテンポがいいですね。
祠が壊れる、というのが全体の後半部にあったのとそれ自体が主体ではなかったのでテーマ合致度はやや低めなのですがキャラが濃かったのでそちらに加点させていただきました。
川の向こう側
ホラー
|
怪談
創作怪談祟り・呪い因習村
『川の向こう側』オデットオディール /著
講評
大学生たちではなくシキョウさんが真の主人公であり「なんかすごい人」なのが分かりやすい良いキャラ設定です。本編では解決しなかった細かな謎でまだなにかある、と読者の想像を膨らませるポイントがたくさんあっていいですね。
強めの課題はないのですが読みやすいのがかえって物足りない印象だったのでぜひ「ホラーなら許される理不尽さ」をプラスしてみてください。
歩く祠
ホラー
|
都市伝説
因習村田舎ホラーあやかし
『歩く祠』雫石しま /著
講評
ホラー要素がありつつホラーではない、児童向け作品のような優しいお話で非常に読みごたえがありました。祠そのものが「ホコラー」としてキャラクター化されているのが非常にキャッチーで全体の構成も文句なしです。
今回はホラージャンルとしての募集ですので最優秀賞は見送らせていただきましたが小説としての完成度は抜群ですね!
全体講評
第2回テーマ短編プチコンテストにご参加いただきありがとうございました。
ネットミーム発の「祠壊し」ですが、ホラー初挑戦だという方も多くおられましたので、新しいジャンル挑戦への第一歩になっていれば嬉しいなと思っています。
今回のテーマでは「抗えない理不尽さ」を中心に8作品を選定させていただきました。
怪異系ホラーとヒトコワホラーでは「怖い」を感じるポイントにズレがあります。そのためホラー愛好家の中では「化け物・人間」「グロ表現あり・なし」のチャートも存在するのですが、それらを踏まえて今回気になった点は下記の4点です。
①老朽化したものが壊れる瞬間に立ち会ってしまった
このタイプの作品は「化け物」の方向に怖いものが作りやすいです。なので、ホラー初心者の方やバックボーンのないホラーを書きたい方はこの形式で書くのがオススメ。全く抵抗するすべのない登場キャラクターたちを見るも無残にあれやこれやできます。ただし化け物特有の会話にならない理不尽さ、を前面に出さないと「そもそも何が起きたかわからない」というぼんやりした仕上がりになってしまうので暗さや残虐さをふんだんに盛り込んでください。盛れば盛るほど怖くなります。
②悪意を持って意識的に破壊した
こちらは「化け物」「人間」の怖さをハイブリッドで美味しく調理できる素敵な方法です。「いぇ~い、読者くん見てる~? これから祠ちゃんを破壊しちゃいま~す」という全く好感度を稼げないキャラクターを設定するとひどい目に合っても読者はスカッと出来るのでホラーが苦手な方でも読みやすいマイルドな作品にしやすいです。翻って化け物と人間のどちらが怖さの核なのか? が濁りやすくもあるので、「こいつ話通じないぞ!」シーンを明確にするよう意識してみてください。
③悪意なく破壊したが、その後のケアを怠った
「ヒトコワ」を前面に押し出しやすい調理法です。「お前、あの祠を壊したのか! 許せん!」というテッパンのストーリーラインに乗せた作品の構成がしやすいですが、ギャグっぽいテイストになりやすい面もあるため、非常に扱いが難しい上級者向けです。「生贄にしてやろう」「洗脳してやろう」という常識では測れない妄信やしきたりとよく馴染むので怪異を登場させる場合はトッピング感覚で添えられると作品に幅を持たせることができます。
④「祠」よりも魅せ場の多かった「怪異」たち
設定したキーワードが因習村だったので方向性に悩んでしまった方も多かったかもしれません。今後は気を付けます。テーマとしては「封印された祠を壊してしまった!」作品の募集だったのですが、祠に付随する伝承、怪異、祟りにフォーカスしすぎて「祠どこいった?」と感じられるものがかなり多かったです。「壊したことで怖いめにあう」作品であればテーマとのマッチ度が高いという扱いで点数を付けたので「あのとき祠と関わらなければ……」が薄くなってしまった作品はぜひ祠の存在感をもっと厚めにしてみてください。
プチコンでは今後も個性的なテーマでみなさんの創作支援を行ってまいります。みなさんで流行ジャンル以外の作品も盛り上げていきましょう!
ネオページ編集部