夏休みの自由研究『婚約破棄観察日記』
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あらすじ
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 8月16日(火)くもり  今日は兄上に連れられて、生まれて初めて夜会に参加しました。  どれでも好きな料理が食べ放題だったので、ぼくは大好物のイチゴタルトをお皿に乗せようとしました。  するとその時突然、王太子のベンジャミン様が伯爵令嬢のクラリスさんに、「ただ今をもって、君との婚約を破棄する!」と言ったのです。  ぼくはとてもビックリしました。  参加者たちもざわざわしています。  クラリスさんが震える声で理由をたずねると、クラリスさんが男爵令嬢のデボラさんに、いんしつな嫌がらせをしているからだと言います。  そんなはずはありません!  クラリスさんは兄上の幼馴染なのですが、昔からぼくのことを実の弟のように可愛がってくれています。  クラリスさんが優しい人だというのは、ぼくも兄上もよく知っています。  そんなクラリスさんが、イジメなんてするはずがないのです。  でも、王太子であるベンジャミン様の言うことには、誰も逆らえません。  クラリスさんは泣きながら、会場から逃げるように出て行ってしまいました。  そんなクラリスさんの背中を、兄上は悲しそうな顔で見つめていました。閉じる
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義理の妹と二人で初詣に出掛けたら
義理の妹と二人で初詣に出掛けたら「お兄ちゃん」 「ん? ――!」  おもむろに俺の部屋に入って来た祐実(ゆみ)を見て、思わず息を吞んだ。  祐実は青を基調にした花柄の振袖を着ており、普段は下ろしている髪をアップにしていたのだ。  艶めかしいうなじが覗き、得も言われぬ背徳感がよぎる。 「どうしたんだよその格好」 「……お兄ちゃんと、初詣に行きたくて」 「……ああ、初詣か」  確かに今日は大晦日。  子どもの頃はよく二人で初詣に行ったものだが、祐実が高校に入ってからは、祐実は友達と初詣に行くようになり、去年も一昨年も大晦日は別々に過ごしていた。 「今年は友達とは行かないのか?」 「……うん、今年はお兄ちゃんと行くって言ったから」 「そ、そっか」  何故今年に限って俺と行きたいなんて言い出したのかは見当もつかないが、別に断る理由もないしな。 「じゃあ、久しぶりに二人で行くか」 「……うん!」 「――!」  普段は無表情な祐実が不意にヒマワリみたいな笑みを浮かべたので、俺の心臓がドキリと一つ跳ねた。  イ、イカンイカン、妹に対して、何をドキドキしているんだ俺は。  今から約10年前、俺が9歳、祐実が8歳の時に親が再婚して義理の兄妹になった俺たち。  この10年、俺は祐実のことを兄としてずっと守ってきたんだ。  最近はめっきり大人の女に成長しつつある祐実を見て、煩悩に頭が支配されそうになることが増えたが、いい機会だ、除夜の鐘を聴いて煩悩を退散させよう。
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