あらすじ
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深夜の東京の救急外来。 看護師が顔を上げて尋ねた。 「桐生修司さんのご家族は、どちらの方ですか?」 神谷綾乃と森川雛子が、同時に立ち上がった。 六年間の秘密結婚。 戸籍上、彼女は「桐生綾乃」だった。 けれど会社では、彼女はただの神谷総務部長。 夫の隣に立つ資格すら、彼は別の女に与えようとしていた。 綾乃は緊急連絡先の欄に自分の番号を書きながら、静かに付き添いの席を二十四歳の女性へ譲った。 契約締結の七日前。 十九の機関を駆け回り、二年をかけて完成させた十年間の大型契約。 その功績も、いつの間にか別の名前にすり替えられていた。 半年かけて準備した退職届を差し出した日。 修司は署名を終えた書類を、彼女の足元へ落とした。 「もう、無理やり辞めさせられるみたいな顔をするな」 離婚の条件は、六年間の結婚歴を消すこと。 一族の体面のため。 会社の上場のため。 そして、別の女性の名誉のため。 綾乃は何も言わず、すべてを手放した。 ――そして、数年後。 京都の会議室で、投資家が尋ねた。 「この事業モデルを作ったのは、どなたですか?」 「実際の貢献者の名前で記録してください」 その一言で、すべてが変わった。 東都契約は白紙になり、彼の会社は上場計画を撤回した。 その日、彼女は初めて自分の名前で立っていた。 ――澄川経営研究所、創設者。 会議が終わった後。 誰もいなくなった会場の最後列で。 一人の男だけが、彼女を待ち続けていた。閉じる
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創意工夫ありし者創意工夫ありし者2026-08-21 13:19ネオ・デビューネオ・デビュー2026-08-21 13:19作者のひとりごと作者のひとりごと
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別れた後、私は彼のクライアントになった――御堂常務の五年隠された恋人だった私、今日からは契約だけを交わす
別れた後、私は彼のクライアントになった――御堂常務の五年隠された恋人だった私、今日からは契約だけを交わす神谷澪は、五年間ひとりの男を愛してきた。 御堂常務。 彼は彼女のために部屋を用意した。
仕事で困れば手を差し伸べた。
悪夢に苦しむ夜には、朝までそばにいてくれた。 だから澪は信じていた。 いつか彼は、自分を正式な存在として認めてくれるのだと。 しかし――。 彼は五年間、一度も彼女を家族に紹介しなかった。 結婚の話を避け続けた。 そして澪が震える声で尋ねた。 「私たちに未来はあるの?」 その時、彼は優しく微笑んで言った。 「この関係は、いつでも終わらせられるよ」 その言葉で、澪はようやく理解した。 彼にとって五年間の愛は、守るものではなく、いつでも解除できる関係だったのだと。 彼女は仕事を辞めることを諦めた。 彼の隣に立つ資格を求めることも諦めた。 両親に本当の関係を話すことも、ずっと待ち続けた。 けれど――。 神戸港に雨が降る夜。 「一緒に両親へ会いに行ってくれる?」 そう尋ねた彼女に、御堂は笑いながら返した。 「それって、見合いで僕を試してるの?」 五年。 彼は知らなかった。 終わらせる権利を持っていたのは、自分だけではなかったことを。 そして翌日。 別れを告げた彼の前に現れたのは――。 恋人ではなく、彼の会社と対等に契約を結ぶ「クライアント」としての神谷澪だった。
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