~アルファ掲示板~
“魔王倒してくるけど質問ある?”
そのスレッドが一つ立った途端、下にコメントが大量に、不特定多数のこの掲示板の住人から一気に押し寄せてきた。
サラリー魔ン“キターーーーー!!!”
アバドン生命の木·ゴールド講師@月曜一限“えぇ?そんな無謀な事をやるんですか!?辞めておいた方がいいですよ!!”
信者どもは貢ぐべし“また無謀な若者が死への路を急ぐ・・・あぁ神よ。それはあなたが仕組んだものなのでしょうか?”
ABS553“>>
などと神の庭園とかいうオカルト信者の方はこう言っております。行ってくださいませ、我が星よ。そして今私の下で起こっている騒動を収める為に早く帰ってきてください我が星よ。”
信者どもは貢ぐべし“おいどういう意味だこの野郎。”
ABS553“その通りの意味ですが?オカルト信者の教祖さん?”
信者どもは貢ぐべし“表出て、星だかなんだかマエハラさんを神だと思っている奴は入信した方がマシだから”
剣の初心者“今現在船の上。マエハラサトルは一緒に今向かってる。雨華”
剣の初心者“それは良かった。そのままアイセラ大陸を横断して魔王城に向かってくれ。凌望”
アバドン生命の木·ゴールド講師@月曜一限“ん?凌望ってあの王剣術師範代の!?一度多分名前が同じ別の人かと思われたのですが、まさか本人だとは・・・”
一人は歓喜し、一人は驚き、一人は憐み、そしてもう一人はその憐れんでいる横でそれを嘲笑い、またもう二人は状況を確認し合って、そのおかげで掲示板を書いている住人の素性がバレた。そんなアルファ掲示板ではとあるスレッド、いや書き込みの下に全員が集中していた。そのパネルの上で、掲示板の上で一人がその書き込みを起こしたのだった。
凌雨華「もうすぐだよ。アイセラ大陸の王都グライムスは」
そんな掲示板の住人である一人の少女、凌雨華がこちらを覗いていた。もうすぐ、彼女はそう言っていた。僕は胡坐を外し、立ち上がってその小さな船から身を乗り出す。すると湾岸に塔があり、個々に建物や港が幅を狭くしてせめぎ合っている。その間に人々が行き交い、物を買い、その建物の狭い幅の中で輝いていた。
やがてそれは大きくなり、その港へと近付いていく。そして奥で離れた所にその権威を主張するように大きな城がその狭い幅の中から、いやその狭い町の中にある道路の先にあった。
やがて僕はその狭い町、王都グライムスに船から足を付けた。その足を付けた男は、上着無くして筋肉が露わとなった状態でその狭い中に歩いていく物だから、周りの人間はその筋肉を、胸と腹にある筋肉の装甲とその腰に差している刀を奇怪に見ていた。
前原「なぁ、服着た方がいいか?」
僕は横で歩いている彼女にそう聞く。
凌雨華「う~ん・・・まぁ見られたくなかったら着ればいいんじゃない?別に買うお金は出すけど」
しかしそんな彼女はどこか無関心であった。そのため僕は旅立つ前に最初に武器屋へと向かった。その筋骨隆々な背中を背に、そのむくむくと、バキバキと育った雄(お)っぱい兼肉体から出てきた鎧を前にして、その背中に見合うほどの防具を探しに。
~武器屋~
城下町の中にひっそりと佇む“武器屋ガルフ”と翻訳された看板が上に取り付けられた扉を開くと、そのドアベルと共に大量の武器がそれぞれ長さによってジャンル分けされるように棚にかけられているのが見えた。目の前にはカウンターテーブルがあり、そこにはメガネをかけているものの、腕には入れ墨の入ったどこか只者ではないような細身の男が立っていた。
「いらっしゃい。そのたくましい筋肉を持つお・・・か、た・・・」
その男はそれを言うだけで、何も表情筋すらピクリとも立てない。僕はもうそれに物怖じすることは無く、ずかずかと入って行った。
前原「この体に見合う防具を」
僕は皆まで言わずともその自分の筋肉を露わにして、そして左に差してある日本刀を撒いていた物をテーブルカウンターに置きながらそう言った。
「その刀を持つお方。お代は結構、こちらに・・・」
そんな彼はその道のプロフェッショナルであるのか、いやもしかしたら選ばれた勇者と他称される僕を店のバックヤードへと案内する。すると、眼前の先にあったのは子どもの日に見るようなお侍の甲冑だった。
「ずっとお待ちしておりましたよ。この謎の甲冑をその変な剣を持っている、新たに勇者と呼ばれる者のために壊れている箇所を直しておいて欲しいとあの方おっしゃられた時は少し驚いたものですよ」
彼はそう少し笑って言いながら、扉を開けてその後ろにある武器庫へと案内する。
しかしそれは自分の差してある刀と色が凄く合っていたのは言うまでもない。その甲冑を僕は下の服から胴、手甲、籠手、脛当て、そして袖と順に付けていく。いや、ほぼ分からなくて半ば店主に促されるがまま、流れるままに付けさせてもらったのだが。
「よく仕上がっていらっしゃいます。兜はお付けしますか?」
前原「ああ、頼む」
彼はそう言って目の前で兜を持ちながらそう言っている。まるで先ほどのヤクザのような目はハイライトが戻ったように優しく、そして執事のようにもてなしてくれた。そうして最後に兜を髪の上から直に被り、そしてついている紐を蝶結びに軽く顎に掛からない程の所で結った。その178㎝の男は、見違える程に戦士、いや武士のような顔をしており、そこにはかつてのあのふにゃけたようにキャラクターはいなかった。まるで脱皮した後のカブトムシ、そんな雰囲気がその兜を付けた男だった。と言うか偶然入ったところで伝説の歴代受け継がれてきた勇者装備をゲットなんてありえない確率ヤムチャが天下一武道会初戦突破した時ぐらいありえない。
「では、魔王討伐のために頑張ってください。新しい“勇者”さん」
彼はそう言いながら、袖を叩いて僕に気つけをしてくれた。そうして僕はその店を出て、逆にお金を払うとまで言ってくれた、優しい彼女を探そうと歩き出したが、カチャンカチャンと兜の辺りから音が鳴っており、どうもこれは周りの視線を集めていた。その完全武装を見て鼻で笑う者や、もはや目を合わせない者が道を行き交っていた。
「おい、変な鎧着けてる奴がいるぜ。何だよアレ全然守れてないんじゃねえか?」
訂正しよう、まあ3人のごろつきみたいな、しかしどこか風格的には只者ではない者達がそんな目を合わせない奴らとは違って目の前にやってきたのだ。その内二人は腰巾着、いや子分の様であった。その三人のうち一人は『俺たちについてこい』と、顎をクイッと動かし路地裏へと歩いていく。着くとその三人の内親分の奴、まあ頭がツルッパゲで首のうなじより上の後頭部辺りにバーコードを付けた奴が待っていましたと言わぬばかりに振り向いた。その男はどこかで見たような暗殺ハゲで、多分名前が二桁の数字そうな顔をしている。そしてついでに言っておくと多分プレイアブルなキャラになったらナレーションがかかるような奴だった。
そうやって彼らを分析していると、3人のうち一人がいきなり手に巻いている長めのバンドのような物からいきなり光る棒、いや刃のような物がシュンッとすぐに出てきた。いかにも珍妙で、奇天烈で、そしてどっかのパルクール系暗殺ゲームのパクりのような武器だ。そう、中二病御用達アイテムのアサシンガントレットだ。
そんな物に僕はどうにかしようとも、どうともせずにはいられなかった。でもこういうのはもう、あの凌雨華と凌望師範のおかげでもう慣れている、どこか落ち着いているのだ。
しかし、そんな落ち着いている自分の元にいきなり仕込み刀を持っている子分の一人はこちらに向かってきて、手を張り手のようにこちらに突き出す。しかもその下には一枚刃があり、それは首元の左にある頸動脈に向かって来ていた。
僕はすぐさま首を横に振って避けて、その手を掴もうとする。しかし、その刃はいきなり左に90度を向いて弧を描くようにしてこちらの首、いや頭に向かって突き刺すようにしてこちらに襲い掛かってきた。そんな変則的な攻撃に対して僕はすぐさま左腕でガードし、その刃は目先数ミリの所で止まった。
前原「(こいつ・・・只者じゃないっ!暗殺者か何かの類だ!)」
前原悟は、その目にも止まらぬたった一撃でそいつらが只者ではない事を察知した。そしてあの時かけた声は僕をこの路地裏に招くための手段で、僕、いや俺を殺す機会をゆっくりと狙っていたという事だな?なら話が早い。狙ったのならこっちも狙われた通りに、まるで某犬を殺されただけでロシアンマフィアを壊滅するジョンさんのその後の人生のようにこいつらをボコボコにしてやろう。そう思った途端、自分の手は自然に拳を作っており、その某暗殺ゲームのパクりを持っている奴の顔に向かって、頬に向かってその出来た塊をぶつける。するとその勢いが凄すぎたのか、いや自分の鍛錬のおかげなのかその男は壁に向かって飛んでいき、そして激突してバンッと音が鳴った後に、上にあった窓が縁ごと外れた。
「ぐえっ!?」
まるでカエルがつぶれるような声がした後いきなり、完全にそれっぽい見た目の三人の中では異彩を放った大きなつるっぱげ頭のヒットマンが後ろからまるで他のゲームから出てきたかのように、Qボタンを連打するかのように首を絞めてきた。その強い力のおかげか、僕は少し死にそうになる。しかし一瞬幾千の事が星のように頭をよぎった。ここで死んでしまったらなんだ、結局あの魔王城にいる魔族の“お姫様”はまた抜け出してしまうじゃないか。何よりここで死んだら依頼を出したクソ野郎が喜んでしまうじゃねえか!
そんな執念からか、そしてこれまでに培った自分が落ち着く事で研ぎ澄まされる技術と心が今、ここで少しずつ殻を外す!そんな事のように闘争反応が刺激された男は今、右肘と右足でその暗殺禿げ頭の緊縛を解き、そして振り返って自分の刀を振ってそいつを3枚おろしにしてやろう・・・と思ったがそんな抜刀は自分の理性とこれまで教えられてきた、見てきた事が静止した。今振り上げれば間違いなく本気を出し過ぎてしまい、挙句の果てに多分この街にいる衛兵に追っかけまわされて逮捕される運命が目に見えてもう一つやって来た。だからまぁ、容赦というか何かで刀を出す事をできなかった。
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凌望「時にマエハラさん。知っておりますか?」
彼は、師範はそう言って僕に何か聞いてくる。それは彼にとっての身構える事、いわば心得に近い物だった。どこかホクホクとした顔で、ニヤニヤと笑いながらそう聞いてくる。
前原「なん・・・ですかい。もしかしてまた心得とか「その通り、ではありますが今回はまあ剣術だとかの話は置いておいてです」
そんな凌望師範は、どこか子どもに伝えるように、いや何ちゃんねる掲示板でよく見るような感じのJ民がペラペラと喋るように話始める。
凌望「真の武器というのは剣や弓、ましてやうちの娘が一生使う事は無い魔法ではないのです。なんだかわかりますか?」
そんな感じで彼は聞いてくる。しかし僕はその答えが分からず、怪訝そうな顔をしていると、この人はその間もくれずにすぐに話始める。
凌望「それは・・ご㌿!真の武器は自身の体の中心にあり!己の魂無くして己の強さ、皆無に等し!」
するといきなり宣言するように大声を挙げて、まるで教訓を読む軍隊の教官のように僕に伝わった。その様子に彼は唖然としており、状況を把握していなかった。
凌望「へっへっへ。まあ全然理解していないようなのでまあ解説しますとね?昔ね、ちょっとだけ他人にこの剣術を教えた時があったのですよ。まぁそのお弟子は非常に弱くてですね?女の子にさえ簡単に負けてしまうような人だったのですよ。その人に言った言葉がそれだったんです。そう、つまりは・・・」
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前原「戦う意志を持て!」
自分の身体が、精神が、魂が、燃え上がるようにしてその目の前にいる脅威Aに向かって突進させる。まるでかつて見た僕とは違って、今やこんなに強くなったと実感している。そんな事を気づかせてくれた・・・
前原「お前に感謝をしたい。フォーティセブン」
そんな何も関係ないはずなのにどうしても彼の容姿のおかげでそんな数字を呟く僕は、その一突きを読み切ってひらりと躱す。そして横に避けた後、一歩を踏み出してまるで股関節をコマのように回し、まるで筐体で遊んだ対戦ゲームのキャラクターが繰り出すような回転蹴りで見るような回し蹴りをその親分格の奴に食らわせる。すると今度は壁に当たるどころか、某大乱闘系ゲームのように吹っ飛んで、そしてキラ~ンと見えなくなって星となってしまった。まるでGAME SETとその文字が表示されそうな状況であった。だが絡んできたのは3人いた、取り巻きAを倒して一人、ボスを倒してもう一人・・・あ、取り巻きBか。