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第2話

チャキッ

そう考えていた彼の横で、銀色に光る刃先を彼に向けていた一人の命知らずが居た。これまでの二人の惨劇の合間を縫って逃げればよかったものの、それであっても逃げるという選択肢を放棄するとはこれまた愚かな選択。いや、主人公としての最善な選択だった。

「う、ううう動くんじゃねえっ!!動いたら刺すゾッ!!?」

その愚かな、いや僕を狙う暗殺者?の刃先は震えており、カチャカチャとそれが揺れる音を鳴らす。そして顔もおかしい程に真っ青で、どこか歪んでいた。僕は何もその小指より小さい刃先のナイフにはビビる事すらできなかった。しかし漢前原悟、またの名を筋肉モリモリマッチョマンの変態は、そのナイフ男に向かってゆっくりと歩き出し、そしてナイフ男は壁へ壁へと後ずさっている。されどこのバカマエハラ、略してバカラはその刃先から半歩手前まで近づいていき、そいつのナイフを刃先ごと掴んでいた。

前原悟「やれよ。僕は今動いてるだろ?(あぁ~やばいやばいやばい!!え!?刃物刃物!こいつら殺そうとしに来たからとりあえず何とかなれと思って抵抗したらこいつ以外の二人は偶然なんかカッコつけて倒す事が出来たけども!あぁどうしようなんか緊張してきた・・・なんか手汗も出てきたし。しかもそのナイフにベットリと!気持ちわるぅ~)」

しかしそのナイフを掴んでいた男は、心の中で動揺しており、この後何をすべきか分からない状況であった。そんな最中、遠くから二人の声が駆け込んで来る。それはどこか慌てており、それに釣られてなのか大きな声であった。そしてその距離が次第近づいてくると、それはガチャガチャと鉄が当たる音と、敵襲!敵襲!という大きく二人はプリキュアのように同期した声が繰り返し響いた。

しかしそのナイフを掴んでいる方を見るとそこにはもういなくなっており、既に遠くの方へと逃げていた。右手にあるあいつのナイフを僕は掴んだまま置いて行って。まぁこっちもさすがに追いかけるのはそんな強さとしてなんだと思って残っていた方の、ガラスが枠ごとそのまま落ちて行った方に向かって、暗殺者なら何か依頼の書だとかなんだとかあるのだろうとポケットをコソ泥のようにポケットをガサゴソと探すものの、何も見つからない。するといきなりその騒動があった路地裏に甲冑同士がぶつかる音がした。そして僕が傍からみたらもはや強盗にしか見えないその様子に許せない者が、いやそこらへんのゴロツキ・・・のふりをした暗殺者と入れ替わるように二人の衛兵がその路地裏にやって来た。

「そこで治安を乱す者、動くなッ!!動いたら即刻処刑するっ!!」

そんな彼らは左腰にベルトのような、現在で言う所のホルスターに柄の付いた西洋剣を差している。

「質問次第では貴様を斬る・・・!貴様の名前は何だっ!答えろ!!」

その二人のうち一人が尋問を開始し、もう一人はハイライトのかけらもない目で地面と垂直にかけた剣の柄に手をかけながらこちらを睨んでいる。

もうこの日本刀と甲冑の出番がやって来たか・・・と思って僕は左腰に水平に差してあるそれに手を握って、一触即発の状況が出来上がった。しかしその二人の遠くの後ろに、凌雨華が路地裏に通り掛かっていた。僕はすぐさま助けを呼ぼうとしたが、彼女は僕を一目見た途端に少し笑ったような真顔で大通りの方へ戻っていってしまった。

前原「(えぇ・・・?なんでぇ・・・?あなた騎士だよね?この二人どうにかしてくれるんだよね?なんで逃げるん?おかしいよそんなの・・・)」

そんな僕は彼女のおかしな行動に困惑せざるを得なかった。という事はつまりこの二人を自分の力でどうにかしないといけないという事だ。僕はもうどうでもよくなって、その腰に差してある日本刀をゆっくりと、その鞘から抜き出した。

~~~~~

まあ私はこの様子を見てとりあえず不利な状況になった時だけ参戦しようと、その前原悟と二人の衛兵とのちょっとした鍔迫り合いを見て凌雨華は考えていた。

~アルファ掲示板~

剣の初心者“いいかい雨華。絶対に自分の力は緊急事態でない限り彼のために使うんじゃない。それまでは温存して見ているんだ。凌望”

剣の初心者“分かった、父さん。雨華”

そんな彼の知らないアルファ掲示板においてもそう言った命令が下されている。

ABS553“なぜ彼を助けないのですか?つまり死んでも構わないという事ですか?”

しかし、掲示板といっても他人が素人の発信した物は簡単にそのメッセージを伝える以外に第三者にもわかってしまう為に、その文言が他人を怒らせてしまう要因でもあった。

剣の初心者“死ぬことはない”

しかしそれでも彼らはこの物語の主人公は死なないと祟を括っていた。

ABS553“その根拠は?”

そんな割り込んできた第三者はその書き込みに怒りを以て、どこかこの掲示板では分からないがキレた口調でそう書き込んでいた。

~~~~~

雨華「ダメだ、まだ笑うな・・・くふっ!」

そんな書き込みを見て、そしてまたあのマエハラサトルの様子を見て笑いを堪えていた。この状況からどうにか笑いが込めないような物をどうにか望んでいた が、さすがに絡まれているのがどうしても面白い。しかもあの二人なんか・・・王立騎士団に居た時に嫌になる程見たような、二人同時に稽古をつけてあげたような気がするけど・・・まぁ見なかったことにしておこう。

~~~~~

その路地裏に衛兵二人に囲まれている彼は、どこか緊張して少し焦っていた。

前原「えっとー・・・その~・・・」

炎を帯びた刀を振り出した所でもう既に戻れなくなっていた。この目の前にいる二人も同様で既に左腰に垂直に出してあった剣を引き抜いており、お互いの刃が擦れる程の距離が出来上がっていた。

「貴様は斬られたいという事だな・・・安心しろ、峰打ちで済ましておく!」

するとその刃が擦れるどころか、既に峰の部分で当たっていた。もうすでに距離は縮んでいたのだ。

前原「なんかもう・・・やるしかない・・・!」

そう不本意に呟いて僕は横に大きく振り上げる。そう、あのヴィトと戦ったときの素人同然の動きとは違って、完全に手練れに近い、流れるような動きであった。そうして彼はその、前の身であったらありえない、もう星の使いの教祖ではない動きをその衛兵に曲芸と言わせる程に魅せた。どうやら目の前の客はそれに呆気に取られて自分の持っている剣すらも落としていた。

「申し訳ございませんっ!!」

すると、いきなり彼の方から衛兵の一人が謝罪を申し出される。以外にもそんな態度で来られてしまい、どこか困惑せざるを得なかった。

前原「え?」

いきなり下ったような態度を見せつけられてしまい、僕はその首筋の前で自分の刀を止めてその顔を伺う。見ればその高貴なる顔はどこか汗で浸され、そして目の前では両手を出して跪いていた。

「いやはや、あのお方なのであったのならどうにも私達が剣をお出ししてしまった事はとんでもございません!私達も助かった者なのですから・・・なのでそのご無礼を何卒お許しください!何卒!!」

どこか言っている事がその、いやこの剣術のお陰だからか多分凌望師範の兄弟子だと恐らく分かった。凌望師範、元々王立騎士団の人だったんだな・・・知らなかった。

前原「あーじゃあ、僕ってこのまま帰っても「構いませんとも!」」

彼らの奇妙なる対応、いや剣を交えた仲なのか不自然にも王国の騎士と僕は急に剣を持たず接近した。また今度から絡まれたらあの二人の顔を覚えておこう。

前原「とりあえずなんか・・・ありがとうごz「構いません!こちらこそ光栄でございます!」

どこか同じ師範代なのにやけに下る態度だなぁと少し違和感を覚えた前原悟であった。

しかしその前原悟が出た後彼らは口々に、

「光栄でございます。我が星よ」

と呟き手の指を交差させて合掌するような変なポーズをしていた。するとその二人は前原悟が居ないことを確認すると、慣れた手つきでいきなりその倒れた裸ベストの胸か腹辺りを触り、そして何か胸に紙のような感触があるといきなりそれを抜き出した。そして彼らは二枚の紙、そのうち一つはどこで撮ったのか分からない前原悟の写真、いやこのアイセラ大陸における発見されている限りの魔法では説明できない人物が事細かに映し出された絵があり、もう一つはその人物における暗殺指令とその下には「星のために。」と。

JNI60「いやはや我が星もご災難な物だなぁ。ずっと不在だったから実質的にあのナンバー2の道具にされちまうとは不幸な物だ。なぁNTR80(寝取られエイティ)」

NTR80「知ったこっちゃねえ、我々に課された任務はただ一つ。我が星を崇拝すること、それ即ち一身を懸けて守る事だ。JNI60(純愛シックスティ)」

そう互いに確認すると、彼らはいきなりその紙をビリビリと裂き始めた。しかしその音で目覚める者は目覚めてしまう。そう、窓枠ごと倒れているヤツである。

「あ・・・あぁ・・・助けて、助けてください・・・何も知らなくて依頼を受けたんです・・・」

そんな声をしているのは愚かにも自分の守るべき存在に対して刃を向けた者がみじめにも命乞いをしている暗殺者の端くれだった。

JNI60「あぁダメダメ。助けてっていったらこっちが殺されるから、ねぇ。こっちもお前さんのような脅威は殺してでも無力化しろって言われてるもんだ」

すると、いきなりJNI60、純愛シックスティと呼ばれる者はその暗殺者の手を取り出してそこにあるアサシンガントレット、いわば某フランスの現在最新作が炎上しているゲームのよくある定番の武器をその手ごと持ち、そして一身に体重をそこにかけ始めた。

しかし、流石の暗殺者なだけあってかなり力がある。だがしかし訓練している騎士団には及ばない。

「くぅぅぅぅ・・・!生きてやる・・・生きて・・・生きてっ!」

次第に刃が肋骨、それを通り越して心臓に一突きと。音のない、そして前原悟も気づかない誰も知らない一突きが暗殺者に暗殺者の手によって無理矢理突き刺された。するとその暗殺者は目を見開いたまま動かなくなっていった。

~~~~~

そんな汚れた手先が綺麗に整えられていく中、星の信者のナンバー2・・・まぁ言うなれば大陸で呼ぶところのグレッグが、大陸東方人類王国のどこか、いやそのナンバー1である前原悟の居る王都グライムスの隣町で笑う仮面を張り詰めたような顔で水晶を前にしており、目の前にいる頭の頭頂部が禿げていないものの白髪が混じり、少し腹が贅肉で出来た店主に、その水晶を買わせるようにプレゼンテーションをしていた。そう、訪問販売である。丸型のテーブルに二人は座って、そして店主と彼の真ん中には来客なのかは分からない酒が置いてあった。その内店主はどこかを布で繋ぎ合わせた服を着ており、そしてもう一人のグレッグ・・・いやABS553はどこか高級そうな服、いわば前原悟が前世で着ていた“スーツ”らしき物に身を固めていた。

ABS553「ですからこの水晶はとある時につなぎますと、画面が現れて、こちらが提供するコンテンツを流す事が出来るんです。しかも4面対応ですからどこから見ても分かるようになっております。どうでしょうか?この機会に是非とも・・・」

彼はそう言って、目の前のテーブルの真ん中より右に置いた。まるで目が開いているのか分からない笑顔と共に。

「で?こんなゴミをうちの店に置くメリットは?」

しかしその店主は耳を小指でほじりながら、そして怪訝そうな顔をして乗り気ではなかった。そりゃあそうだ、なぜなら見ず知らずの人間が何をするのかよく分からない、その服からか魔法学園の学生ではないと思われるMr.ノーバディに高値でその水晶を売りつけられて、サギられる可能性があるのだから、余計疑い深くなるのだ。しかもここは異世界、クーリングオフ制度も無ければ製造物責任法も無い。だからこそこいつは店主にとって憎悪、そして懐疑の目で見られていた。しかし、そんな店主の目をかいくぐって彼は一言申し訳程度に言う。

ABS553「ではお聞きしましょう。この冒険者会に一月回る度に何人来ますか?」

するとほじっていた小指を止め、姿勢を直し、そして片目でその座っているABS553の元をじっと両目で見る。どうやら店主にとって痛いところを突かれたようだった。

「それが何だ?何が言いたいんだ?グレッグさん」

その口調は少し怒りを以ている。なぜならこの周りにABS553、セールスマンと店主しかいない。すると店主は苦虫を潰したような顔で、

「・・・100人だ。若者はこの街を出て、あとはしがない老人共にとって或る意味“憩いの場”さ」

すると何かABS553は満足したのか、満面のツラでいきなり自分の手の平を擦るようにしていた。まるでゴマを擦るような動きで、そして少しニヤリと笑いながら。

ABS553「そうでしょう。そうでしょう!だからこそ私の水晶を買ってはいかがでしょうか?もちろんお安く致しますし「分かった。そいつをもらおうじゃねえか。いくらだ?」・・・お買い上げどうもありがとうございます!ではこの商品を取り付けさせていただきますね・・・まずはこれと・・・」

最早NHKの集金というか勧誘をしているような彼だったが、まぁそんなこんなで契約が生まれてホクホクとしていた。しかしこの契約は教団の資金調達の為では無い。そして勧誘でもない。そう、これはABS553、彼自身の謀略の一つであった。

「(足元見やがって・・・!ボンボンのガキが・・・舐めてると潰すぞ・・・!だがまぁいい。所詮ジジイ共の憩いの場だ。博打一つぐらい・・・バレないだろ)」

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